東京を拠点とする第一地方銀行の 東京都民銀行(本店:東京都港区、柿﨑昭裕頭取)と第二地方銀行の八千代銀行(本店: 東京都新宿区、酒井勲頭取)は3日、2014年秋に共同持ち株会社を設立し、経営統合することで大筋合意したことがわかった。
両行はすでに金融庁などへ合意内容を報告しており、来週中にも正式に基本合意文章を締結し、発表することにしている。
この件についてある金融筋は次のように語った。
「東京都民銀行の取引先は都内の中堅・中小企業が中心で、八千代銀行は都西部や神奈川県の中小企業や個人事業者が中心。相互補完が可能との思惑が一致している。
それに両行とも過去に倒産しかけたという経験がある。東京都民銀行は1997年に多額の不良債権を抱え、まさに倒産寸前という状況に陥った。一方八千代銀行も、1999年に経営破たんした国民銀行が母体だ。
経営統合で一番の問題は、企業文化が異なる組織同士がうまくやっていけるかどうかだ。失敗例は多い。
たとえば半沢直樹のモデルとされる東京三菱銀行とUFJ銀行出身者との権力闘争。そして最近金融庁から業務改善命令を受けたみずほ銀行の『反社会的勢力への2億円融資』も、合併した第一勧銀、富士銀行、日本興業銀行との企業風土の違いで、相互チェック機能の隙を突かれたといわれている。
リスクが予想されるなか、両行が今回経営統合に踏み切った最大の理由は、『東京都民銀の経営状態が、かなり厳しい状況にあり、退職引当準備金があと2~3年で底をつく』との見方があるからだ。
東京都民銀は金融激戦区の東京で、長い間苦戦を強いられている。かつては日本興業銀行系の地銀として同行と友好な関係を築いていたが、同行がみずほグループになり、その関係は希薄になっていた。
一方八千代銀行は、2000年8月14日に経営破綻した国民銀行の店舗網と預金、正常債権を譲り受けた。この時に預金保険機構から1,837億円の贈与と350億円の公的資金を注入されている。八千代銀関係者は、『いまでも行内で国民案件と呼ばれる国民銀行の案件処理が残っており、これが経営負担になっている。八千代銀行も経営が楽な状態ではない』と打ち明けている。
八千代銀行は、国民銀行を譲り受ける際の公的資金を、2006年3月に業務・資本提携した旧住友信託銀行に第三者割当増資を行なうことで返済しており、現在三井住友信託銀行は、15.3%の八千代銀行株を保有し、八千代銀行の筆頭株主となっている。
その三井住友信託銀行が、成果の上がらない八千代銀行との提携関係に終止符を打つため、東京都民銀に対して『八千代銀株の買い取りを働きかけ、金融庁も同意した』というのが、今回の経営統合の発端と囁かれている。
いろいろな思惑のなかで今回経営統合に合意した都民銀行と八千代銀行ではあるが、ともに同じような苦労を経験し、はじめから気持ちが通じ合える仲であることもあり、意外と他行とは違い経営統合はうまくいくのではないか」。
持ち株会社の新社名や人事などは今後検討することにしているが、経営統合によって預金量は、4兆4,000億円となり、105行ある地銀の22位にランクアップし、首都圏では地銀上位グループに仲間入りする。
安倍晋三内閣の政策の柱となる「骨太の方針」で、「地域金融機関の再編促進」を打ち出されており、「地方経済の再生には、地域金融機関の再編による機能強化が必要」としたことが、両行の経営統合を後押しする格好となった。
アベノミクスでは「インフレターゲット2%」を掲げている。裏返せば弱小の地方銀行は取引先の経営が厳しく、再び金融危機に見舞われる恐れがでてきており、今回の東京都民銀と八千代銀の経営統合は全国的な地銀再編を加速する引き金になるとの見方が有力だ。
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