観光客が台湾を訪れる場合「ホテル」への宿泊が一般的だが、観光人気の高まりでホテル料金も高騰している。台北市・民権東路にある日系ビジネスホテルでは、3年前は1泊当たり1,800台湾ドル(当時約5,000円)で泊まることができたシングルルームが、現在は、1泊2,600台湾ドル(日本円で約7,200円)まで高騰している。
ショートステイよりも、1週間以上のミドルステイの方が好まれる台湾。宿泊料金の高騰は旅行客にとって悩みの種だが、そういう時勢だからこそ注目されているのが「ゲストハウス」だ。通常4~6人部屋で、台湾の場合は、一般的な建物の部屋のみを借りる場合が多い。看板が出ているわけでもなく、ひっそりと運営されている。「大部屋」と「シングル」で料金が異なり、大部屋だと500台湾ドル(約1,500円)前後、シングルで1,000台湾ドル(約3,000円)前後で、シングルに泊まれば大幅な節約ができる。ゲストハウスに泊まるのは若い旅行客が多いが、それ以外に留学生の姿もある。留学生が異国で部屋を借りるのは手続き面でハードルが高い。「一旦ゲストハウスに泊まって様子を見て、大学や語学学校からアクセスが良く、生活環境が便利な部屋を借りよう」と、ゲストハウスを「つなぎ」と捉えるパターンもある。滞在する1~2カ月の間に、物件を探し、見つかれば出て行くという方法だ。
「ひっそりと」運営されているところが多いゲストハウス。インターネットでも日本の検索サイトには出てくるが、台湾の検索サイトには引っかからない。「日本人向けに日本語のみで書かれた」サイトを作成、客も「日本人以外」をターゲットにしておらず、「日本人だけが泊まりにくれば良い」というスタンスのようだ。不可解にも思えるが、そこには、触れられたくない「理由」がある。
実は、ゲストハウスの多くが、台湾当局に「宿泊業」としての申請をしていない。ホテルなどの宿泊施設は、本来なら登録をしなければならないが、大多数は登録申請をせず「知人に部屋を貸している」という表向きで運用されており、いわば「グレーゾーン」。台湾の検索サイトなどで目立ってしまうと、「違法営業行為」として現地当局に家宅捜索に入られてしまう恐れもあるからだ。
とはいえ、料金は魅力的。日台交流が加速するなかで、「ゲストハウス」の需要は伸びている。見ず知らずの日本人同士が異国で出会うことで「友情」に進展するケースも少なくない。一方、セキュリティや安全面、設備(共同風呂・トイレ等)に劣る面もある。利用を考える際は、功罪を熟慮するべきだろう。
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