福岡市内で2日に開催された「think GLOBAL think HONG KONG 国際化へのパートナー:香港」。シンポジウムの第2部では、「食品・農水産セミナー」が行なわれ、味珍味(香港)有限公司代表取締役社長のデニス・ウー氏が登壇、「香港における日本食品の魅力」をテーマに講演した。
「食のワールドカップ」といわれている香港。香港では食料のほとんどを輸入に頼っており、2012年の食品輸入総額は1,627億香港ドルにも上った。そして、地域別輸入の割合は1位は中国、2位はアメリカと続き、日本は第5位となっている。
福岡県を代表するブランドいちご「あまおう」など、日本の食品は香港で高い評価を受けている。しかし、なぜ日本の順位は5位に甘んじているのだろうか。デニス氏は「日本は各県の農業法人が、バラバラで香港に進出するのに対し、他国は国単位で戦略を立てて、食の輸出を行なっている」と話した。また、香港で人気の高い農産物には収穫量の限界があり、香港人口の10%を占める富裕層(月収40~50万円)の需要に追い付いていないのが現状のようだ。
次に、デニス氏は、AEON(イオン)やSOGO(そごう)など、香港の高級スーパーにしか日本食品が陳列されていない点を指摘した。そして、Park N ShopやWelcomeといった、香港でおよそ530店舗もあるローカルスーパマーケットへの進出が不可欠だと提案した。実際に、韓国の輸入品のほとんどはローカルスーパーに陳列され、業績を伸ばしている。短期間で大勢の香港人に知られるブランド戦略が不可欠だ。
一方で、香港人が「日本の食品」を好んで口にし、人気が高いのも事実。福岡県のあまおうは好評で、味珍味(香港)有限公司では9年前から取り扱っている。価格は1,000円~1,200円と高価にもかかわらず、品質の良さと甘味が評価され、富裕層の購買欲は衰えることがない。また、鹿児島県産のブランドきんかん「きんかんぼうや」は、酸味がなく、香港人好みで、きんかんに馴染みがない香港でも人気が高い。
香港のもう一つの特徴は外国人観光客の数だ。香港を訪れる観光客は年間4860万人で、その70%以上を中国人が占めている。そして、中国人の食への関心について、デニス氏は「中国人のほとんどがMade In chinaを信用していない」と話した。よって、香港に進出することで、中国にもアプローチすることができるのだ。また、中国と香港は経済貿易緊密化協定を結んでおり、香港で生産し、中国へ輸出すれば、関税が掛かることはないというメリットもある。香港を通して中国への貨物貿易やサービス貿易などを行なうと、ゼロ関税や資格の相違認証などの優遇を受けることもできるという。
香港での輸出ビジネスをきっかけに、効率的にかつ幅広く中国へと販路を拡大できる点も、日本の農業法人・企業にとって非常に魅力的といえよう。ただ、輸出ビジネスを広げるうえで、県単位ではなく、オールジャパンで輸出ビジネスを行ない、香港用のブランド戦略をしっかりと計画する必要がある。こうした課題を解決できれば、需要に見合った供給やローカルスーパー・中国へと販路が拡大でき、さらなるビジネス拡大が期待できるだろう。
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