「日中友好のシンボル」として期待される「孫文・梅屋庄吉と長崎近代交流史展示室」(孫文展示室)の設計が進んでいる。長崎県がプロポーザルを経て設計・施工業者を決定してから、施工内容を事前に調整していたため、契約までに約4カ月かかったが、9月13日に随意契約が終わり、10月の県議会総務委員会での部長説明で、「現在、設計中」と報告があった。現在、県の私的諮問機関である展示検討委員会で、プロポーザルでの提案内容をベースにして、展示内容などの議論が始まっている。
県文化振興課の中村哲課長は「長崎が、日本・アジアの近代化に果たした大きな役割をきちんとお見せするものにしたい。日本人だけでなく、中国をふくめ外国の人にもぜひ知ってもらいたい」と意気込む。デジタル技術を使った映像で、歴史のストーリーを実感できるものをめざすとしている。
孫文は、1911年に始まった辛亥革命の指導者。梅屋庄吉は、長崎出身の実業家で、物心両面から孫文を支援し、辛亥革命の成功を支えた。
「孫文展示室」は、長崎県・市が共同で、旧香港上海銀行長崎支店記念館(長崎市松が枝町)に、常設展示室を整備し、同支店の紹介、孫文と梅屋庄吉の関係を核として、長崎近代交流史を紹介し、上海航路や国際通信など長崎がそのなかで果たした役割などを幅広く情報発信するもの。展示の場であると同時に、友好交流の拠点施設をめざしている。長崎県が「アジア・国際戦略」の柱としている「孫文・梅屋庄吉と長崎」プロジェクトの一環。
今年(2013年)5月に業者が決定してから契約まで約4カ月と長期間がかかり、予定していた2014年1月24日までの完成を危ぶむ声が出ていた。文化振興課では、設計・施工を一本化して随意契約するのが初めてだったことや、「孫文展示室」を整備する建物が国指定の重要文化財であり展示資料が歴史的価値を持つため展示室の設計・施工内容の細部を事前に調整する必要があったことが影響したとみられる。
長崎県文化振興課は、今のところ、完成予定に変更はないとしている。「孫文展示室」オープンは、冬の長崎の観光シーズンを彩るものとして、観光関係者から期待が寄せられている。長崎歴史文化博物館で2012年に開かれた特別企画展「孫文・梅屋庄吉と長崎」には5万7,000人以上が入場し、集客効果は高い。1月24日に完成すれば、長崎ランタンフェスティバルが2014年1月31日から開催されるので、絶好のタイミングになり、観光への相乗効果が期待できる。一方、旧香港上海銀行長崎支店記念館の休館期間は、2014年3月末までが予定されており、「オープンが4月にずれ込むことは想定済み」との冷めた見方もある。
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