<積極果敢に挑戦する中小企業の牽引役として>
――今後、福岡の都市力をさらに高めていくためには、大企業はもちろんですが、地場の中小企業の頑張りが欠かせません。福岡商工会議所は、それら地域経済を支えている中小企業の牽引役を担っておられます。これからの中小企業の成長・発展に向けては、どのような施策を打っていかれますか。
末吉紀雄氏(以下、末吉) 従来の中小企業は、「大企業に対して『弱者』であり『救済』していただく存在である」と考えてきたような歴史もあります。
しかし、今は違います。中小企業政策は『成長を重視』したものに変わってきており、中小企業の活力こそが、地域経済の成長の原動力です。また、中小企業は、限られた経営資源で生き残りをかけ、絶え間ないイノベーションによって新たなニーズを掘り起こしていく重要な存在となっています。そのため、福岡商工会議所の2013年度事業計画では、「チャレンジする商工業者の成長実現に向けた取り組み」を挙げています。
中小企業は、事業規模や従業員数、経営志向、事業環境などさまざまで、支援ニーズも経営の各段階に応じて異なっています。そのため福岡商工会議所では、創業や経営革新、国内外への販路開拓、海外進出支援など、経営の各段階に応じて、さまざまな経営課題にきめ細かに対応していきます。
たとえば、九州一円からヒト・モノ・情報が集積する強みを活かし、大手流通業などの仕入れ担当者を招聘しての「商談会」を定例的に実施しています。昨年度は、国内外合わせて1,200回超の商談会を行ないました。意欲に溢れ、優れた商品力のある多くの商工業者、とりわけ中小企業の販路開拓を、引き続き積極的に支援していきます。
また、地域に活力と雇用を創出するためにも、「創業」は極めて重要だと考えます。政府の成長戦略でも「開業率10%を目指す」としていますが、現在の日本の開業率が約5%であるのに対し、福岡市の開業率は同じ基準の統計がないものの、概ね全国平均より2%程度高く、政令指定都市のなかでも最も高い値となっています。
このことからも、福岡市は「大きなビジネスチャンスがある街」と言え、"開業率の高さ"も福岡市の活力の源となっています。この開業率については、今後、10%以上を目指していきたいと思います。
やはり、少々の失敗を恐れず、積極果敢なチャレンジ精神を持った方が多く現れてくれることを望みます。商工会議所も、そうした意欲溢れる起業家を積極的に応援していきます。とくに若手企業家などは、若手企業家同士、大手企業、異業種などと、幅広い「交流」の機会を望んでいます。たくさんの地域の商工業者が加入しているスケールメリットを活かし、そうした交流機会を提供していくことも商工会議所の役割です。
――これからの中小企業は、現在の経済状況下、どのような視点で経営戦略を練っていくべきでしょうか。
末吉 法制面やマーケット、販売チャネルなど、経営を取り巻く環境は刻々と変わります。こうした環境のなかで会社が存続していくためには、市場環境の変化に対応していくことが必要不可欠となります。
中小企業の強みは、「機動力」と「柔軟性」です。変化を恐れず、持ち前の機動性や柔軟性を存分に発揮し、技術革新だけでなく、閃きなどをきっかけとした新製品・サービスの開発、業務改善による生産性向上、販路開拓など、自らの事業を少しでも前進させる「イノベーション」が大切になってくるでしょう。
――最後になりますが、人口150万人を突破し、これからますます発展していくであろう福岡市に対して、どのような都市になっていくことを期待されますか。
末吉 今後は、ますます国際化やグローバル化が進んでいくなか、国内のみならず、海外の各都市とも都市間競争をしていかなければなりません。
福岡市は、半径1,500km圏内にはアジアの主要都市がいくつもあり、7億人以上の経済圏があるとされているように、とりわけ、これほど地理的条件に恵まれた都市は、他にはありません。現在、福岡市は「アジアのゲートウェイ」としての地位を確立していますが、これからはアジアの一員であることをもっと意識し、「アジアのなかの福岡」との観点に立った「国際都市・福岡」となることを期待したいと思います。
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<プロフィール>
末吉 紀雄(すえよし・のりお)
1945年、福岡県生まれ。67年に西南学院大学商学部卒業後、日米コカ・コーラボトリング(株)(現コカ・コーラウエスト(株))入社。2002年に代表取締役社長兼CEOに就任。10年1月より代表取締役会長。2011年11月に、福岡商工会議所会頭に就任した。
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