福島第一原発事故により被災した人たちを支援する「子ども・被災者生活支援法」の基本方針の修正案が9日判明。被災者や避難者、被災地域の自治体と十分な意見交換、議論がなされることなく、11日に閣議決定がなされようとしている。
10日、被災者らにより結成された市民団体や、福島瑞穂参議院議員らが、参議院会館で、復興庁との交渉を行ない、十分に被災者の声を反映させたうえで閣議決定するよう要請した。
被災者支援法の基本方針案で示されている支援対象地域は、福島県東部の33市町村に限定されており、それ以外の高放射線量地域は、「準対象地域」として、一部の施策しか受けられないことになっている。対象地域以外の健康管理、医療、健診や、住宅支援について、被災者から不安の声が上がっている。
<支援対象地域は福島東部に限定>
復興庁の出した被災者支援法の基本方針案では、支援対象地域を福島県東部の33市町村に限定している。9日に基本方針の修正案を出したが、被災者、被災地域の自治体の要望をくみ取ったものではないと批判の声が上がっている。
放射能線量が高いとされる福島県に隣接する宮城県丸森町、千葉県の我孫子市、野田市などから年間の被ばく限度である「年間1ミリシーベルト」を越える地域に関しては、すべて対象地域にすべきとの要望が上がっているが、基本方針では基準の線量を示さず、対象地域は限定的なまま閣議決定まで持ち込まれようとしている。
8月30日に基本方針案が発表されて、被災自治体や被災者から約4,900件に及ぶ多くのパブリックコメント(公募意見)が寄せられた。健康管理に関する意見、要望が多く、政府が指定している支援対象区域以外でも、健診や住宅支援を求めるものが多かった。
これらの被災者の意見に対して、復興庁からは、「どのように話し合い、どのような方向性で、どのような結論を出したか」という真摯な回答が、まだなされていない。
被災者のための、被災者の意見を重要視すべき支援法案だが、当の被災者の意見を十分にくみ取らないままに進められようとしている。
<パブリックコメントへの回答を>
参加者からは「閣議決定のスケジュールを延ばし、もっと被災者とのキャッチボールを行なってから、決定すべき」、「被災者に対しての説明会は都内と福島で2回行われただけ。被災者の意見を反映させた案とは言えない」などの声が上がっていた。
パブリックコメントへの回答が出される以前に、寄せられた意見にどのようなものがあったのかさえも公表されていない。参加した社民党の福島瑞穂参院議員は、「せめて、パブリックコメントが公表されてから、閣議決定するべき。どのような意見が寄せられたか、みんなで確認することは大事。みんなの力で、いい基本方針を作るべき。この拙速の決定が、後々、禍根を残すことになるのでは」と、十分に練り上げないままの基本方針案がこのまま決定されることを危惧していた。
被災者の意見をもっと反映させるべく対応に当たっている復興庁の阿部英樹政策調査官は、「環境省など各省庁とやり合っている。有識者会議などを経て、必要性が高ければ、宮城県、茨城県など対象外の地域も含むように、ブラッシュアップしていく」と説明した。
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