<埋もれている労働力>
ラオスに製造業が進出した場合は特に、労働力の確保が必須だ。総人口約647万人と、ミャンマーなどに比べて人口が少ないラオスは、労働力確保の点で懸念されることが多い。
鈴木上級顧問は、「人口は少ないが、農村の8万人ぐらいに雇用がない状態で、農村で生産に寄与しない人たちはタイに出稼ぎに行っている状況。労働力の流出を防ぎたいと思っている」と、経済特区での雇用創出に意欲を燃やしている。
また、ラオスでは大企業だけでなく、中小企業にもさまざまなチャンスがある。農林業、縫製業などで成功している企業も少なくない。モノづくりにおいて、技術を受け継ぐ後継者がいなくて、困っている企業の新たな市場としても注目される。
たとえば、家具製作で国内トップレベルの技術力を持っている福岡県大川市の家具。最近は、イケア、ニトリなど大型店に押され、売り上げはピーク時の2割程度に落ち込んでいるという。大川家具の技術、デザイン力と、ラオスの豊富で良質の木材、労働力をマッチさせれば、培ってきた技術が生き残ることになる。
大川市では、鈴木氏らラオス政府関係者が投資セミナーを開催したこともあり、県会議員団がラオスに視察に行くなど、進出に向けて少しずつ進んでいる。
鈴木氏は、「大川市にある家具製作の技術をラオスで生かせば、中国など近隣国に輸出するビジネスとしても有望だと思っています」と、語る。うまくマッチングができれば、沈みかけていた技術が、アジアで活路を見出すきっかけになる。
<物流、医療などに課題>
「電気代と土地のリース代が安く、タイに比べると人件費も4分の1程度で済むので、今なら物流コストをペイできる。働き手としてのラオス人は、目もいいし、何より人柄が温厚」と、鈴木氏。
交通網が未整備であったり、トラックが時間通りに動くのかなど物流面の課題はあるものの、ラオス政府のソムディ計画投資省大臣は、物流インフラの整備を強化すると明言。ニコンなど日系企業と提携することの多い地元のKPグループが、人材育成、派遣業に力を入れており、労働者の質の点でも改善策を模索中だ。
海外からさらに多くの投資を呼び込むために、現地で働く駐在員の生活を支えるのに欠かせないのが医療。ここには、まだ乗り越えるべき壁がある。
鈴木氏は、「医療の分野は、もっとも望まれる投資の一つ。緊急の手術の場合、多くのラオス人がタイやシンガポールに行って治療を受ける。富裕層は海外に治療に行くことが多く、そこは改善したいと思っている。技術面での協力、資本面での投資を望んでいます」と、医療分野を強化すべきとの認識を示し、高い技術を持つ日本の医療業界からの進出を呼びかけていた。
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