公益社団法人 日本通信販売協会(事務局:東京都中央区、佐々木迅会長)は11日、設立30周年記念講演会をパレスホテル東京で開催した。500人を超える業界関係者が参加した。記念講演会では、(株)ジャパネットたかたの高田明社長が「私が思う通信販売の未来とは」と題して講演。TVショッピングでお馴染みの、台本なしのアドリブ講演に会場が沸いた。
<競争だけでなく、共存共栄も大事>
高田社長は冒頭、変化が激しく、予測不能の経済環境の中にあって、「経営とは何かと考えることがある」とし、紙からラジオ、TVショッピング、インターネット、ケーブルTVへと急速に進化してきた通信販売業界の30年間の歩みを振り返った。通販自体の捉え方が相当に変わってきたことを指摘し、自らの経験に照らして自己の経営哲学を語った。
同氏は、常に考えていることとして、競争原理が働かないと人も企業も成長しないとする一方、「競争だけでは成長はないのではないか」と問題も提起した。
「競争と同時に、業界内での共存共栄も大事」だとし、「消費者目線に立って責任を持ってやっているということを1社ではなく、皆で力を合わせてやっていくことで信頼を高めなければならない」と強調した。
「(設立当初は)長崎でラジオを少しやっていたが、全国に展開できないかとテレビをやってみた」と、自らテレビショッピングを手がけたときの経験に言及、「年配の方には信頼があるということで、新聞をやった。それから、インターネットが出てきたのでやってみた。ネットで1台目のカメラが売れたときは、なぜ売れるのだろうとびっくりした」とし、「他社だけを見ていたらサービスは劣化する。目先のことを一歩一歩やることが一番いいと思う」と、競争原理に振り回されることなく、内面に目を落とすことの大切さに触れた。
<理念は問題解決の近道>
また、高田社長は企業理念の大切さにしばしば言及し、「人は自分が思ったとおりの人間になることができる」との信念を説いた。
そのなかで同氏は、経営が2年連続の減収減益を続けていることを明らかにした。同社では、テレビが最も売れたときは1日1万台、1カ月で30万台、売上にして200億円も売れた時があったが、現在は1カ月に5億円程度に激減しているとし、昨年の売上が1,170億円に落ち込んでいると述べた。そこで高田社長は、今期の利益が最高益の136億円に達しなければ社長を辞する構えであることを内外に発表したという。
「人は言葉で示し、行動で示す」とし、「自分を信じてやるぞと思ったときにほとんどの夢は叶う」との強い意思で臨んだ今期は、すでに9月時点で100億円を超えたとしている。ただ、目標を1億円でも割り込めば辞意に変わりはない旨を会場に向けて明言した。
「辞める辞めないは大したことではないと思っている。大切なのはジャパネットの方針を消費者の方にわかってもらって買物をして頂くこと。他社との比較ではなく、自社のなかに目標を持ってやる。自分が先頭を切ってやっていく。目標達成は社員の力を借りなければできない。社員の力を結集することによって覚悟を示し、東京の六本木にもオフィスを構えた。人は心が折れたら原点に帰って、また前へ進む。その意気込みを感じてたくさんのお客さんが集まってくれる」(高田社長)。
さらに、「人は過去を振り返るが、私は大嫌い。過去は過去。売上のデータでも、あくまで1つの結果に過ぎず、それは将来の予測にはならないというのが今の現実。創業の精神に帰ったら、ジャパネットではどんな商品も扱ってきた。テレビを売り出したら売れた。テレビが悪くなったときに原点に帰る。テレビを脱却してどうやって200億円をつくっていけるのか、新しいことをやろうというのも1つの考えだろう」と述べ、新しい家電製品を、テレビを売ったときのように集中的に販売していく方針を決めたという。
最後に、「ジャパネットは私がいなくても大丈夫。この1年、皆が必死でやったことが(将来の)自信につながる。自分たちでこれを達成したという思いを知って欲しい。社員は毎日、自分たちでその変化を見るようになった。売った後のコールセンターの品質。物流の品質。稼げる会社、利益を出せる会社を作ることが世の中に貢献することになる。企業は何のために存在するのか(が大事)、誰のためにではない」とし、理念を持ってさえいれば、問題解決までに近道を通ることができると繰り返し述べた。
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