<いざ最新鋭加工場へ>
鮮魚市場内にあるハクヨープロセスセンターを訪れた。まず、外部から菌を持ち込まないように、入場専用の靴に履きかえる。さらに腕時計を外し、簡易白衣やマスク、キャップを装着。まるで、精密機器を扱う研究室のようだ。写真だけ見れば、ここが水産加工場だとは思えないだろう。着替えが終わると、ローラーで髪の毛やほこりなどを丁寧に取り除く。そして、次に手洗いだ。壁にはタイマーがあり、薬品を使って30秒以上、指の先から爪の間までじっくり洗浄し、仕上げにアルコール消毒を行なう。菌は手から移る可能性が高いため、これがHACCPの各工程での危害予測とチェックにあたる。さらに、次の部屋に移動する際には、エアシャワーを通過する。ここで、ローラーで取りきれなかった髪の毛、ほこりなどを強風によって飛ばすのだ。この工程が終わり、ようやく入場できる。
内部で目立つのは、天井に何台も設置されている大型のプラズマクラスターだ。殺菌効果があり、24時間365日稼働。このため、部屋のなかはほぼ無菌状態であるという。ここで気が付いたのが、においだ。鮮魚市場の市場内はやはり魚市場らしい磯の香りと鼻に残る魚のにおいがしていたが、この加工場内ではほとんどにおいがない。無菌である証明だ。本来、加工場は菌の繁殖を抑えるため、室温15℃の設定が目安だ。しかし、ここではプラズマクラスターによる殺菌効果で、室温を18℃に上げても問題がない。その分、光熱費を抑えることができ、節電にも貢献している。
加工場内には、新規に導入した干物用乾燥機もあった。この乾燥機内には紫外線を発する部分があり、それによって殺菌をしながら送風する。紫外線と風―つまり、天日干しと同じ状況を乾燥機内でつくり出している。これまで1日に2,000枚の干物を加工するのが限界だったが、新機器の導入により6,000枚以上の加工が可能に。生産効率は約3倍に上昇しているという。製品となった干物を見せてもらったが、皮目は干物だと思えないほど、生に近い。また、開いたなかの部分は、写真でもわかるように、さばいたときと同じ色をしている。通常なら干物は乾燥させることで茶色に変色するものだが、同社の干物は生に近い状態であることが一目でわかる。この色を見てもらいたいがため、パッケージには余計なデザインを施していない。自社製品への自信の表れである。
<魚食普及へのさらなる活動>
「最近は、肉でも魚でも何でも冷凍庫に入れ、食べるときは、取り出してレンジでチン。でも、同じ冷凍物でも、冷凍処理までの時間で味もうまみもぜんぜん違います。本当の魚の味を知ってほしいのです」と語る安部氏。
同社の製品は、大手百貨店のギフトセット用パンフレットに掲載されている。全国に名前が広がるほか、当然、多くの消費者がアキラ水産の商品を知ることになる。「その分、責任は重くなります。そのために国際的な認証を受けて、さらなる高みを目指しています。安心安全をいくら言葉で説明してもなかなか伝わりませんが、HACCPを取得することで、それが可能になります」と、安部氏は今後の目標を力強く語った。
全社員がルールを徹底しなければ、HACCP取得は難しい。社員への周知と規則遵守の徹底により、同社は目標達成を目指す。
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<COMPANY INFORMATION>
(株)アキラ水産
代 表:安部 泰宏
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3
設 立:1960年4月
資本金:2,000万円
TEL:092-711-6601
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