<自治体、規制緩和に転換>
県外大手の進出が相次いでいる背景には、地元自治体が大型店の出店規制から緩和に転じたことがある。熊本県は、2000年代初めのイオンとイズミによる郊外型商業施設の出店攻勢で熊本市などの中心市街地の衰退が進行したとの反省から、大型店出店を規制してきた。県での店舗面積1万m2超の大型店出店は05年11月の「イオン・ルクル」が最後。しかし、県は中心市街地の地盤沈下に歯止めがかからなかったことから、これまでの方針を見直し、むしろ大型店を誘致し地域振興に活用する方向にかじを切っている。益城町の農地にイズミの大型施設建設を認可したのはその現れ。益城町に近い熊本市佐土原では2000年代半ば、イオンモールが大型施設を計画していたが、認められなかった。
<地元勢は群雄割拠>
熊本県は規模の小さいスーパーが多い。最大手は寿屋の流れを組むディスカウントストア(DS)のアレス(店名は「スーパーキッド」)で年商233億円。2位もDSのロッキーで155億円。3位がイズミの子会社で旧ニコニコ堂の小型店を継承したゆめマートの141億円。以下4位鮮ど市場138億円、5位生協水光社、6位マルエイ102億円と突出した大手が存在しない。県外企業にとっては、地元に強い競争力のある流通大手がおらず、進出しやすい。
これにはわけがある。2000年代初め、寿屋とニコニコ堂の両大手が破綻した後、県の流通業界は中小スーパーの群雄割拠する戦国時代に突入した。年商100を超えるのは上記の6社。最大手のアレスは233億円と、長崎県首位のエレナの半分以下の規模しかない。食品スーパー1位のゆめマートは純粋な地元資本とはいえない。年商20億円以上のスーパー・生協はデータマックスの調べで、16社で20億から100億円未満に9社がひしめく。これらのほかに、福岡県では姿を消した個人経営の食品スーパーが郡部に残る。これら企業の多くは店舗網を積極的に拡大したり、同業者を買収して規模を大きくする経営体力に乏しい。県内業者の競争は激しく、利益の蓄積が遅れ、規模の拡大が進んでいない。
そんな市場に付け込むように、マックスバリュ九州やハローデイ、HIひろせ、コスモス薬品、ダイレックス、イズミなど様々な業態の企業が進出してきた。
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