少子高齢化社会の進行にともない、社会保障費やインフラ整備費による地方財政の逼迫が懸念されている。本稿では、運動療法による高齢者の健康維持を提唱する大学教授と、地域医療に長年携わる医師を新たに迎え、健康づくりに向き合う各々の姿勢や行政に対する要望などを誌上鼎談の形式でお送りする。ご登場いただくのは、以下の3名だ。
北九州市長 北橋 健治 氏
筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 田中 喜代次 氏
医療法人秀英会新庄整形外科医院 理事長 新庄 信英 氏
<要介護者は今後も増加 メタボ・ロコモ・認知症>
――ここからは新たにお2人を迎え、誌上鼎談を行なってまいります。まず最初に、北九州市における高齢化の現状と見通しを確認させてください。
北橋 北九州市では全国平均を上回る速さで高齢化が進んでおり、2012年3月末時点での高齢化率は25.5%と、人口の4人に1人が65歳以上の高齢者という状況です。政令指定都市のなかでは、最も高齢化が進んでいますし、今後もこの傾向は続くと見ています。団塊の世代が75歳に達する2025年には、人口の3人に1人が高齢者になると予想されており、とくに、今後は後期高齢者(75歳以上)の増加が見込まれます。高齢者の夫婦だけで暮らす世帯や、1人暮らしの高齢者も増加しつつあるのが現状です。
――なかには加齢に起因して介護が必要になる方も出てきますね。
北橋 高齢者のうち、介護保険の要介護認定を受けている人は全体のおよそ2割です。必ずしも要介護認定の有無だけで判断できるわけではありませんが、少なくとも本市における総人口の20人に1人が介護の必要な高齢者ということになります。もちろん、高齢者のなかには見守りや交流、健康づくりなど、地域活動の担い手として幅広く活躍される元気な方もたくさんおられます。
田中 高齢者が要介護となる要因はさまざまですが、統計によると、最も多いのが脳血管疾患で27.4%、次いで認知症が18.7%となり、上位2つの要因だけで半数近くを占めます。そのほか、高齢による衰弱や関節疾患、転倒骨折、心臓病といった要因が続くのですが、なかでも認知症は、症状の進行により日常生活のすべてに支障をきたすようになるため、高い割合を占めることになるわけです。2011年の癌発症者数が67万人であったのに対し、認知症および軽度認知障害を合わせた数は862万(2012年調べ)人もいます。こうした統計から、高齢の要介護者は、今後も増えていくことが予想されます。
新庄 田中先生が挙げられた諸要因は、認知症を除けば、メタボ(メタボリックシンドローム、代謝症候群)とロコモ(ロコモティブシンドローム、運動器症候群)に行き着きますね。脳疾患や心臓病はメタボの典型的症状ですし、骨折や関節疾患は運動器の障害そのものです。高齢による衰弱も運動器の減退をともないますので、やはりロコモに分類できるでしょう。しかも、太りすぎれば膝を悪くするし、膝を悪くすれば運動不足で太るといったように、メタボとロコモは互いを招く関係にあります。要するに、認知症とメタボとロコモ、この3つを避けることが介護に頼らない元気な余生の鍵と言えるでしょう。
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