公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)の設立30周年記念講演会では、ジャパネットたかたの高田明社長の講演に続き、記念座談会が行なわれた。テーマは「通販とJADMAの来し方、行く末」。JADMAの歴代会長4人が登壇し、通信販売業界の30年の足跡を振り返り、将来について課題と抱負を述べた。
<「重みのある商品がなくなった」(斎藤氏)>
コーディネーターを務めたのは第10代JADMA会長で明治大学大学院教授の上原征彦氏、パネリストには、第5代会長で(株)カタログハウスの斎藤駿社長、第7代会長で(株)ファンケルの池森賢二会長、現会長で(株)QVCジャパンの佐々木迅社長の3人。
カタログハウスの斎藤社長は、1976年に東海道五十三次を走破するというアイデアを盛り込んだランニングマシーンで大ヒットを飛ばした時代を「豊かな社会だった」と表現。豊かな高度消費社会の恩恵で伸びてきた通信販売業界において、当時培ったノウハウが役に立たない時代に入ったと指摘した。
当時は、「おしん」という貧乏物語が貧乏を懐かしく、美しく捉える視聴者に迎えられてブームになったが、今は貧困への逆流ということがリアリズムをもって語られる時代だとし、「追い風が止んで私たちは立ち止まっている」と現状を分析した。また、「私にとっての通販は言葉のビジネスということで(消費者に)伝えてきた。今は言葉ではなく商品で苦戦している。私たちの言葉で伝えなければならないような重みのある商品がなくなってきた」と、価格競争に走っている通販市場の危機を訴えた。
ただし、先の見えない時代だからこそ夢をつくって自分を切り拓いていくとし、「見えない社会でどのようにしたら顧客が持続可能となるのか、『スモール・イズ・ビューティフル』から『スモール・イズ・サスティナブル』と呼び変えて、確実な利益を追求する売上をつくるために、確実な利益をつくりあげる人材と一緒に、化学反応を起していきたい」と抱負を語った。
<「Eコマースをインサイダー化しないと大きな規制が出る」(池森氏)>
ファンケルの池森会長は、「(商品を)説明することで消費者に楽しく伝えることができ、選んで頂けること」が通信販売の利点と述べる一方で、JADMAが消費者保護と業界の健全な発展を目的としてきたにもかかわらず、消費者が望むような情報をきちんと伝えることができず、かえって規制強化につながっている業界の矛盾を指摘した。
新たな機能性表示制度の導入など、安倍首相が進める成長戦略の下で大きく変わろうとしている健康食品業界だが、「Eコマースという世界をインサイダー化させてゆかないと、大きな規制が再び出るという悪循環に陥る」と警鐘を鳴らした。
<「事業者は消費者が判断できる情報を」(佐々木氏)>
QVCジャパンの佐々木社長は、消費者との共存がキーワードだと訴えた。
「規制も含めて消費者が学習することで知識を得て、判断してもらう。売る側は、情報を出すことでその情報のなかで消費者が判断できてこそ、通信販売は伸びると思う」と語った。また、消費者保護という名目があるにもかかわらず、既存の業界や既得権益を持っている企業や団体の利益になるばかりで、必ずしも消費者保護につながっていない業界の実情を指摘した。
さらに、Eコマースのなかでアウトサイダーのやり方を規制することで、インサイダーである通販事業者が規則を守るためのコストが上がっているとし、共存といっても、「消費者の方がより勉強する。通販事業者が表示をきっちり説明することで(安全な)商品を選んでもらうことができるようになるのが理想」だと付け加えた。
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