<システムを応用し、買い物難民対策へ>
ユニゾンは2011年3月の震災を機に災害情報システムのバージョンアップを行ない、現在ではテレビで災害時にテロップが流れれば、ツイッター、ホームページ、携帯メールなどに転送するなどSNSとの連携も行えるようにした。これを"報道マネジメントシステム"と呼ぶが、このシステムを応用すれば、買い物難民対策になると今村社長は語る。
ユニゾンでは以前、岐阜県のケーブルテレビを通じて、テレビのdボタンを活用したデータ放送でネットスーパーの実験を行なった。地元のスーパー、運送会社の協力を得て実施したが、これはビジネスとして軌道には乗らなかった。
しかしながら、全国各地には買い物に行きたくても車に乗れない、坂の上にあり、足腰の負担になって気軽に買い物に行けないという高齢者は少なくはない。自治体によってはこのシステムを有効活用できるかもしれない。ゆえにユニゾンのITシステムは大きな可能性を秘めている。
「今からは次世代版のITシステムを作っていきたい」と今村社長が話すように、SNSを駆使した新しい情報発信の在り方を構築しようとしている。
また、TBSとの共同開発により2005年に開発された「STORM」も注目を集めている。これは高速ファイル転送ソフトで、ネットワーク環境に左右されず、高速通信を可能にするというものだ。たとえば報道の世界において、海外の記者が日本に画像データを送る際、回線の遅延、ゆらぎ、パケットロスにほとんど影響されずファイル転送を行なうことが可能となる。1分、1秒の速さと信頼性が求められる報道の現場において、とても心強い存在となっているようだ。
<オリンピックを契機に米・マイクロソフトとの業務提携へ>
このような商品開発の成果が認められ、今年5月、九州の企業だけでなく全国、そしてアジアでは初めてとなる米・マイクロソフト社との間で業務提携を結ぶことにつながった。前述の「STORM」がマ社の「Windows Azure Store」のアプリとして採用された。
「STORM」の名が有名になったのは2010年のバンクーバー冬季五輪、12年のロンドン夏季五輪に日本有数のテレビ局で活用された後、今年4月、ラスベガスのNAB2013放送機器展において、マ社のアプリとして紹介された。名実共にアジアを代表するITシステム開発企業に成長している。
同社は1991年11月、福岡市博多区に設立され、翌92年に社員4名でスタート。現在の社員は約60名。汎用性の高いITシステムを部品化し、これをうまく組み合わせることで従来かかる費用の大幅カットに成功した。
ユニゾンは今村勉也社長をはじめ、スタッフは「小粒でピリリ」の行動指針の下、かゆい所に手の届く機能が満載という商品開発で全国のキー局をはじめ、各メディアから支持を受けてきた。そして今年、米・マイクロソフトとの業務提携。たった4名でスタートしてから20年。福岡の地場ITベンチャーが国内から世界へ羽ばたこうとしている。
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