16日に開かれた、財政制度等審議会(財政審)について、共同通信が以下のように報じた。
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会が16日開かれ、防衛予算を議論した。財務省は自衛官の高齢化が進み、人件費が膨らんでいるため、早期退職制度や再就職支援充実など人事制度を見直すことが必要との意見を表明した。日本は人件費が防衛予算の4割を占め、米国やドイツなど主要国と比べて高水準。財務省によると、陸・海・空の各自衛隊で、2012年度の自衛官の平均年齢は36.1歳と、1991年度から4歳近く上昇。幹部が約4,000人増えた一方、若年層は職場環境の厳しさも影響し大きく減った。
上記の財政審における財務省の意見に対し、反論すべき点を3つ列挙する。
(1)『高齢化』とあるが、07大綱以降の体制および実員の縮減したなかにおいて、厳しさを増す安全保障環境(任務の多様化・国際化)や装備の高性能化に対応するため、中核要員を確保してきた。
(2)『人件費が膨らんでいる』とあるが、そもそも『高齢化』が事実無根かつ関連のない話である。近年の体制縮減や総人件費改革などにともない人件費そのものは着実に削減させてきた経緯があり、人件費は膨らんではいない。むしろ確実に減らしている。全体の防衛予算が縮減されてきたなかで、一定程度(約40%)の割合を占めている事実はあるが、他省庁も同様の状況である。かつ他省庁は人件費を固定費とし、話題にもしない。
(3)諸外国との比較が記載されているが、規模の大きい米軍は人件費の割合は26%であるが、装備も高額であり、恩給などは国防費とは別計上となっている。そもそも比較にならない。ドイツは、人件費割合は52%であり、日本よりも割合が高い。ちなみに、イタリア・スペインは約70%近い人件費となっている。
財政審での議論は、国防軽視そのものと言える。自衛官官舎の家賃値上げにともなう自衛隊の即応性の低下と合わせて、自衛隊を弱体化させるだけのなにものでもない。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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