福岡県飯塚市(旧筑穂町)の産業廃棄物処分場(安定型)に鉛などを含む有害物質が違法に捨てられていた問題で、小川洋福岡県知事は16日、県が運営業者に代わって、鉛が溶け出す廃棄物の撤去などを行政代執行する方針を表明した。
同産廃処分場を運営する藤宏産業は、実質廃業状態。県は、住民らが起こした裁判で「環境生活保全上の支障の除去等」の措置命令を出すように義務付けられたため、2013年5月に藤宏産業と代表者ら5人に措置命令を出したが、「履行する見通しがない」と判断した。
2001年8月に処分場周辺で汚染水流出が発覚してから12年余りがかかって、違法廃棄物撤去の準備が開始される。同処分場は、廃プラスチックなど「安定5品目」しか処分が認められていないにもかかわらず、周辺から基準値を超える有害物質が検出され、住民らが県に再三対策を求めてきた。
県監視指導課によると、12月議会で、行政代執行の補正予算の承認を経て、年度内に着手する見込み。予算金額は未定。県は、10月下旬に処分場周辺住民の意見を聞いたうえで、11月上旬に専門委員会を開催して、代執行の工事内容、工法を審議する予定。
県が行政代執行する措置命令の内容は、鉛の溶出による地下水汚染のおそれを除去するために鉛が溶出する廃棄物の撤去または鉛の不溶化、地下滞留水の対策、雨水排水設備の整備など。県監視指導課は、「まず地下滞留水、雨水の対策を、1~1年半かけて実施し、その間に鉛の溶出による地下水汚染のおそれを除去する工法などを専門委員会に審議してもらう」としている。
県によれば、藤宏産業らは措置命令に対し、いったんは実施する意思を県に示していたが、履行期限を過ぎても具体的実施計画をなんら提出しなかった。10月1日、県からの事情聴取に「資産がなく資金調達のめどがない」と回答した。
措置命令から代執行着手に準備することを表明するまでに5カ月がかかった。県は、代執行には県民の税金が使われるため、措置命令を実施すると表明した業者に催告や粘り強い指導をしてきたとしている。
だが、これまで県は、住民の再三の要請に対し、監督権限を適時・適切に行使せず、業者の違法廃棄物処理を野放し。住民らが措置命令の義務付けを求めた訴訟で県は福岡高裁で敗訴し上告。県議会が上告取り下げを決議したにもかかわらず、県(当時は麻生渡知事)は予算を使って裁判を継続。保身のために安易に税金を投入し、住民の健康を守るための出費は惜しむという慎重な姿勢を浮き彫りにした。
監視指導課の大野一郎課長は、NET-IBの取材に対し、「代執行と別に、2度と同じことを起こさないために、(問題発覚当時の県の対応について)どこが悪かったのかの検証はやらなければいけない」と述べた。
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