福岡猟友会で活動してきたベテラン猟師の村上雅昭氏と九州大学の研究者の丸居篤准教授が、スマートフォンの遠隔操作で扉を閉め、野生動物を効果的に捕獲する箱わなのシステム(ソフト面)を4年がかりで開発した。この新型の箱わな開発のハード面に協力した福岡金網工業(株)の若宮工場長の高取修氏、それを支持した同社代表取締役の山本健重氏、そして発案者である村上氏に、この商品についての可能性を聞いた。
檻は溶接ができればつくれるが、それを現代の技術に合わせてつくることは非常に労力がかかる。チンチロ(引き金の部品)1つにしても、獲物の気持ちになって考えなければならない。その点でも、福岡金網工業(株)は豊富な経験を活用し、村上氏の要望に丁寧に応えていった。
山本社長は「高取工場長にすべてを任せております。彼の経験と対応力がなければ、ここまでの仕上がりにはならなかったでしょう」と力強く言う。
わな師の考えがわからなければ、微細な部分の意見などが理解できず、結果、野生動物に逃げられてしまうこともある。そういった細やかな部分の指示もうまく共有できた結果がようやくかたちになりそうだ。「『たかが、檻。されど、檻』というほど、檻の重要さに注力しています。この檻があって初めて私どもの技術も活きるわけです」と村上氏は語った。
村上氏のソフトを使い、九州大学の丸居准教授が設計・開発し、福岡金網工業が制作する――。「プロテクション・キャッチャー」は、それぞれの努力がなければ、決して生まれなかっただろう。村上氏は言う。「すでに発注の問い合わせもたくさんいただいております。獣類の被害は全国でも多く、困っている方々が大勢いらっしゃいます。農林水産省やJAからも本製品を活用しようという声もあります。開発当初から自然に優しい環境保護システムを一緒につくってきたスミ・マインドクリエイティブさんを販売元として、福岡金網工業さんの協力のもと、世に広めていきたいと思います」。
本製品に使用されているこの保護ナビゲーションシステムは、誤って人間の世界に足を踏み入れてしまった動物を傷つけたくないという、村上氏たちの自然への"愛"から生まれた製品とも捉えられる。「多種多様な動物を傷つけずに安全に捕獲できることは、今後の地球環境を改善していくうえでの大きな一歩となるでしょう。今まで捕獲に多額の資金がかかっていた海の生物も、この保護ナビゲーションシステムであれば低資金でできるでしょう。さまざまな応用が考えられるので、世界中で活用していただきたいですね」と、村上氏は今後の展望を語った。
本システムが動物保護のスタンダードモデルになる日は、そう遠くないだろう。
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■製品概要
野生動物保護捕獲システム
「プロテクション・キャッチャー」
高さ:150cm(240cmセンサー部含む)
幅:150cm
奥行き:200cm
重量:130kg
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