国内の金融機関は「企業格付制度」の定着によって、ペーパーで企業を査定するようになった。
企業は決算書に基づき、「正常先」、「要注意先」、「要管理先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」の分類を受けて、融資を受けるシステムになっている。
要するに、企業は銀行が査定した格付けによってその融資がプロパーなのか、保証協会付なのかが決まる。たとえ保証協会付の貸出でも銀行本体からの融資であり、反社会的勢力への融資かどうかの審査は行なわれている。
しかし、個人が「自動車ローン」、「住宅ローン」、「学資ローン」などの「個人ローン」の借入申込をする場合、受付窓口の段階で「暴力団などの反社会的な勢力の構成員か」どうかの判定は、金融機関によってその対応はまちまちであった。
今回、オリエントコーポレーション(オリコ)とみずほ銀行との『問題融資』が表沙汰になって以降、どこの金融機関も「個人ローン」についてもプロパー融資と同様に、厳しい資格審査をするようになったと言われている。
個人ローンの代表格である「住宅ローン」の保証は、かつて生保や損保それに日本信販やオリコなどの信販会社が保証するケースが一般的であった。
しかしバブル崩壊により一部の生損保を除き、保証会社そのものが経営難に陥るケースが多発し、保証業務からの撤退を余儀なくされた。一方保証を受けていた銀行も「住宅ローンの延滞が発生しても一覧書きで「日本信販100%保証、オリコ100%保証」が、金融庁検査で通用しなくなり、個別に分類されることになったため、一定規模の地方銀行は自前で保証会社を立ち上げていった。
ある地方銀行傘下の住宅ローン保証会社の元社長は、こう語る。「みずほ銀行の問題融資は他人ごとではない。現実にはどこの銀行にもあることだ。実は2~3年前のことだったが、住宅ローンを受け付けプロパーでのつなぎ融資を審査部に上げたら、反社会的な勢力の構成員を理由に融資の承認を下ろさなかったことがあった。審査部はプロパー融資については厳格に審査しているが、個人ローンを扱う個人融資部からは、その様な調査をせよとかの指示はなかった。地銀のなかで厳しい当行でさえ、オリコとみずほ銀行と同様、ローンについては甘い考えを持っていたと言わざるを得ない。自動車ローンの場合はせいぜい5年程度の期間で済むが、住宅ローンの場合は30年以上の長期融資であり、金融庁が今回の『問題融資』でどのような判断を下すかによって、大変なことになるかもしれない」。
今回のみずほ銀行の『問題融資』は各金融機関にとって決して開けてはならない『パンドラの箱』であった。にもかかわらず、それに手を付けたのがみずほ銀行のケース。この問題が今後各金融機関に与える影響は計り知れないものがあり、第二、第三のみずほ銀行が生まれるのではないかとの憶測も囁かれるようになっている。
ほかの銀行でも同じような問題が起きている可能性がある。金融庁は、徹底的に調査し、監督すべきである。
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