<地域主導でエネルギーと経済を回す>
東日本大震災以降、宮城県三陸の牡蠣の養殖場や陸前高田の酒蔵に寄付し、市民の出資・意志で復旧・復興を支援し、牡蠣やお酒ができたら、その物品をお礼として送ってもらうというプロジェクトが動いたが、日本全国の地域、地域にこのような「意志のある出資・投資」を行なう流れが少しずつできてきている。
「全国ご当地エネルギー市民ファンド」でも、福島や山口で、災害で被災した農家や酒蔵に寄付として出資し、地域の野菜やお酒をお礼として送ってもらうという計画が立てられている。
地域エネルギーファイナンスに詳しい千葉商科大学大学院の伊藤宏一教授は、「江戸時代の日本には地域、地域の人たちが協力し合って、地域でお金を回すシステムがあった。近代に入り、国家財政にお金を回すシステムが主流になったが、最近は、クラウドファンディングなどで意志のある投資、出資をする流れが復活してきた。エネルギーの分野では、市民ファンドが先頭を行っているのではないか。経済的に、地域が自立するきっかけになると思う」と、エネルギー分野での市民参加の流れを分析した。
<人づくり、場づくり>
このご当地エネルギーの流れが全国的に広がりを見せるのが、持続可能なエネルギー利用の理想的なかたち。岩手や山形など、市民参加型エネルギー事業の立ち上げを検討している地域がほかに30カ所ほどあり、来年、さらにファンドを活用した地域主導型のエネルギーファイナンスの形を導入する地域は増える見込み。大きな一歩を踏み出したが、まだまだ課題は多い。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、「人づくり、場づくりが大事。長野県のおひさまファンドの成功例のように、長い間やってきている地域では、原亮弘社長のようなベテラン選手がいる。しかし、ご当地でのエネルギー事業の経験がない地域には、そういうキャリアを積んできた人材がいない。人を育てて、場を作っていかなくてはいけない」と、ご当地電力の担い手不足を課題に挙げた。
デンマークでは、地域で電力を作り、地域で消費するかたちが、約90%を占めているという。日本では、まだ走りはじめたばかりだ。
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