九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)で重大事故が起きた際の放射性物質の拡散・飛散状況を市民自らの手で調べるために風船を飛ばして結果を観測する「風船プロジェクト」の第4弾が10月27日、佐賀県唐津市の波戸岬海浜公園の海のトリムで実施された(同実行委員会主催)。
好天に恵まれた会場では、太鼓やギター、歌などの文化プログラム、集会に続いて、午後2時過ぎ、約300人の参加者が500個の紙風船をいっせいにリリースした。佐賀県小城市の夫婦は、3歳、10カ月の2人の子を連れて参加。「今の時代のことを考えるだけでなく、子や孫の時代、将来の安全を踏まえて、エネルギー問題を考えてほしい」(父親)、「佐賀で子育てするうえで、福島のようになってほしくない」(母親)と語っていた。
風船は、北東の風に乗って、その後、上空で東の方向に向かった模様。風船には、「原発をなくそう。つながろう。未来は私たちがつくる」など印刷や手書きのメッセージを書き込んだカードが付けられており、発見者に連絡をお願いしている。28日午後2時までに、佐賀県江北町、福岡県大牟田市、熊本県阿蘇市など10件の発見情報が主催者に寄せられた。風船を拾った人は「ここまで飛んでくるんですね」と驚いていたという。
風船プロジェクトには、「ピース&グリーンボート」(ピースボート、韓国環境財団が共催)に参加する日韓の約50人が、クルーズの途中で参加した。クルーズの案内人として同行している石丸初美・玄海原発プルサーマル裁判の会代表、藤浦皓玄海町議も参加した。「ピース&グリーンボート」は、日韓両国からそれぞれ約500人が乗船し、釜山から、台湾、沖縄、上海、福岡など東アジアをクルーズしながら、平和と環境問題を考える船旅。
集会では、ピースボートの吉岡達也共同代表、韓国環境財団のキム・ファヨン女史が来賓挨拶した。
吉岡氏は「放射能は国境を越える。放射能とたたかうには、国境を越えた運動が必要。玄海原発でも古里原発(韓国)でも事故が起きれば、日韓双方が壊滅するような被害が起きる。私たちは、広島、長崎という悲劇を体験し、福島の被害を体験した。今、私たちが脱原発という声をあげなければ誰があげるのか。国境を越えて声をあげよう」と述べた。
キム女史は、「このように多くの人が一堂に会し、楽しく時間を過ごしながら、脱原発に参加しているのを見ると、脱原発はできるのではないかと思います。東アジアの平和には、脱原発が重要。私たち日韓の市民が協力して活動することで、脱原発はできるし、子どもたちに幸せに生活できる環境をつくってあげられる」と挨拶した。
風船プロジェクトは、2012年12月8日の第1回以来、季節ごとのデータを把握するため約1年にわたって4回実施してきた。今回が最終回(ファイナル)。
実行委員会の柳原憲文リーダーは「あっという間の1年だった。関心がどんどん高くなってきたのを感じた。4回の結果を分析して、九電や自治体への要請に生かしたい。今後は、原発の危険と『原発なくそう!九州玄海訴訟』を知らせる場、原告らが集う場として新たなかたちを考えたい」としている。
風船の発見情報は、同プロジェクトのホームページに掲載されている。
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