日本ではほぼ見ることができない、タブー視されていることの一つに「北朝鮮」の文化がある。古い時代に北朝鮮から流入してきた人、文化はあるものの「リアルタイム」の北朝鮮は、報道でしか見ることができない。そのリアルな面を北京では垣間みることができる。それもそのはず、北朝鮮と中国は友好関係にあり、メジャーではないものの、中国には「北朝鮮」文化が存在するのだ。
その一つが「北朝鮮直営レストラン」だ。北京市朝陽区朝外大街にあるレストラン「海棠花(花の「ハマナス」の意味)。この店は、北朝鮮政府が実質的に経営している。中国の普通のレストランと同様に、日本人も入店できる。チョゴリを着た本国北朝鮮出身の女性従業員が接客。彼女達は北朝鮮政府高官の娘や親戚など、権力者との血縁関係者が多い。また、容姿も審査されているという話もあり、北京の巷では「喜び組」と呼ばれている。
ある韓国人情報筋は「彼女達は出稼ぎに来ている。中国国内で生活しても寮のようなところで生活し、常に見張られた生活。韓国人も『北朝鮮人は可哀想』と同情する人も少なくなく、旅行客がこのような店に行く場合、チップを差し出しすこともある」と現状を教えてくれた。
接客はいたって「中国人に対して」と変わらない。ただ過度な写真撮影は「御法度」。これは当レストランに限らず、中国では一般的に、食堂などの店内での写真は嫌がられる。年配の従業員はカメラを向けられていることに「慣れていない」ということもあるが、最近では、「衛生基準を満たしていない」「社会的に問題のある洗剤」など、意識はしてないものの写真に写りこんでしまうことによって、結果的に、それがネットなどで拡散され、「衛生局が指導に入る」ことを避けるためだという。
看板メニューは冷麺、ビビンバなどで、日本にある韓国料理店と変わらない。出された冷麺は、やや酸味が強いものの、コシや弾力がある。北京での人気店の地位を得ており、韓国料理を食べ慣れている日本人の口ならば「合う」レベルにはなっている。
政治的には、日本とは「敵」なのかもしれない。しかし、食を通して僅かではあるが接することのできる「北朝鮮」の女性たち。彼女たちは、北朝鮮のなかでは恵まれているのかもしれないが、やはり抑制された生活を送っている。冷麺にも「悲哀」が漂うのである。
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