「日独サスティナブル建築フォーラム」が29日、東京都港区の六本木ヒルズで開催された。元国交相の前田武志参院議員らが参加し、エネルギーと建築、住宅と健康、高齢化に対応したコミュニティづくりなど、多角的な観点から、持続的な社会のあり方について考察する講演、パネルディスカッションが行なわれた。
環境先進国のドイツでは、エネルギーを生み出す建築「プラスエネルギーハウス」の実証実験などが行われ、実際に成功を収めている。
ドイツ国交省の持続可能な建築部のディーター・ヘグナー事務次官が、ドイツのプラスエネルギーハウスの現状について講演し、「住宅において、高いスタンダードの建物を増やしていかなければならない。サッカーのブンデスリーガのようにトップを行く企業グループが出てくる必要がある。今後は省エネ建築であっても、快適さを求められる。高齢化、資源の節約も考えなければならない。日本の住宅市場も今後、環境性能の高いものを求められるようになるのでは」と語った。
<政策による規定と助成>
ドイツでは、複層ガラス、壁、床などの断熱材、光の取り入れ、換気に工夫をすることにより、極力、暖房などのエネルギー消費を減らし、太陽光など自然を利用した発電でエネルギーを生み出すプラスエネルギー住宅が増えてきている。
政策により、住宅の「熱損失」「快適な暮らしをするのに必要とされるエネルギー消費量」「日射取得」などに規定があり、住宅業界は、その規定以上の建物を建てることが求められている。
ヘグナー事務次官は、「エネルギー効率のいい住宅には助成金を付けることにより、支援している。基準よりもいいものを作った場合、補助金の額が増える。消費者も、環境性能レベルの高い住宅を求めるので、企業などによる研究開発も進む」と、政策の後押しがあり、エコ住宅分野は好循環に入り、断熱性能などの技術も進歩した。革新的なプラスエネルギーハウスでは、外壁、屋根、前壁などにソーラーパネルを埋め込み、暖房、照明、家電の電気をすべてまかなうだけでなく、電気自動車に充電して走らせることもできる。自家消費して余った分は売電する。
ただ、ドイツでは、住宅での使用エネルギー消費量の多くを暖房費が占める。ドイツ式の断熱方法などがそのまま日本で通じるわけではない。
日本では、茨城県つくば市で、冬は断熱し、夏は風通しをよくする季節に合わせて衣替えするエコ住宅などのエネルギー効率を高めた住宅の取り組みが進んでいる。だが、日本でもドイツのような政策的後押しが必要。ドイツでは、首相、議会の決断、リーダーシップにより、省エネ住宅、低炭素の都市づくり、脱原発、再生可能エネルギー導入など幅広いエネルギー政策を推し進めてきたが、日本では、住宅は国交省、健康分野は厚労省、温暖化対策は環境省と縦割りの弊害もあり、なかなかスムーズに進んでこなかった。
今後、脱化石燃料を進めるにあたって、より一層の技術革新が期待される省エネ改修やプラスエネルギー住宅の分野。支援する政策も、省庁の枠を取り払い、効率化を図らなければならない。
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