福岡市中央区で10月25日、ベトナム投資に関心を持つ企業・社会人を対象としたセミナー「ベトナム・ナムディン省投資環境セミナー」が開催された。
セミナーでは、JETRO(日本貿易振興機構)海外調査部アジア大洋州課の大久保文博氏が登壇。大久保氏は今年の7月までのおよそ1年間、ベトナムの首都ハノイの貿易大学に留学した経験から、「日系企業のベトナム進出について」をテーマに、現地での調査や体験を交えながら説明した。
東南アジアの中心に位置し、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にも隣接するベトナム 。メコン川流域の主要経済回路へアクセスできる点も注目され、ベトナムに関するJETROへの問い合わせが後を絶たないという。2011年より、政府によるマクロ経済・社会安全保障などの安定を図る社会経済開発戦略も進められ、急成長によるインフレも安定期を迎えている。ベトナムでは電気、食品や自動車など6分野の優先発展業種が首相決定され、投資の恩典も含めた優遇政策が策定中であり、ベトナムへの投資環境は整いつつある。
しかし、ベトナムへの進出に対して、大久保氏は「日本と同じビジネスを行っても、ベトナムでの成功は難しい」と注意を促した。もちろん、数多くのベトナム人は「メイド・イン・ジャパン」を高く評価している。大久保氏自身も現地で調査を行い、家電製品などの日本製品が絶対的な信頼を得ていることを実感したそうだ。ただ、社会主義でいて、発展途上のベトナムでは、省エネ技術などを重要視した製品の販売や、日本同様の従業員の管理方法は通用しないのが現状のようだ。
ベトナム人が商品を購入する際、機能面ではなく、価格・品質面が優先されているという。加えて、商品のデザインも重要で、日本での「シンプル・イズ・ベスト」ではなく、格好良さやスポーティさがベトナム人の購買欲に繋がるそうだ。さらに、安価で人材を雇用できる反面、従業員への気配りが欠かせないという。「国民みな平等」という考えを持つベトナム人はプライドが高く、常により良い条件の仕事を探しているそうだ。そのため、居心地の良い職場環境を維持することが大切で、社員旅行などを企画し、互いを理解し合い、社内の情報収集が欠かせないという。
社会経済開発戦略がもたらすインフレ収束によって、ベトナム国内の小売市場や外食・ホテル産業は業績を伸ばしている。また、安定した経済成長が進むに従い、国民の購買欲の上昇も確実で、ベトナムを含むASEAN諸国の重要性は高まっていくに違いない。大久保氏は「ベトナム進出において、国の環境・人の気質などの調査を行い、国と人に受け入れられるビジネスプランが不可欠だ。この課題をクリアすれば、ASEAN諸国の持つ大きな販路獲得に繋げることも夢ではない」と話した。
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