<市と園で責任のなすり合い?>
福岡市の(社福)福岡市保育協会 中央保育園の移転事業に狂いが生じた。安全対策・保育環境などで反対意見のある現・移転予定地において、建設中の建物の1つが来年4月の開園に間に合わない可能性が高まっている。新・中央保育園は、「中央保育園」と「第2中央保育園」の2つの建物が一部つながる設計。このうち完成が間に合わないのは「第2中央保育園」。建築基準法上、1つの保育園とみなされるため、予定通り来年4月に開園する場合、消防の同意も得て「仮使用」という形になる。(同内容は、福岡市のニュースサイト「HUNTER」が報じた。詳細はコチラ)
同事業で福岡市保育協会に助成金を出している福岡市の担当課長(こども未来局保育課)は取材に対し、工期遅れの可能性を否定しなかったものの、「4月の開園に間に合うよう中央保育園にお願いしている」の1点張り。同課長によると、中央保育園から「遅れを取り戻すよう努力している」との報告がなされたという。しかし、その「努力」の具体的な中身については把握していない。また、着工が1カ月遅れたことを理由としてほのめかした。
市税から助成金を支出している事業について、市が把握していないということも甚だ疑問であるが、同課長が「建設業者とのやり取りをやっている」と繰り返し語った中央保育園の対応は、さらに不可解なものだった。同保育園の井場正英園長は取材に対し、「建設業者とのやり取りは市が行なっている」として工期の遅れを「まったく知らない」と回答。市の保育課長と井場園長のどちらかがウソをついていなければ、同移転事業の責任の所在が不明ということになる。いずれにせよ、計画に狂いが生じ、混乱していることの何よりの証左だ。
<予定通り300名で募集>
そのようななか、来年度の園児募集が11月1日から始まった。福岡市こども未来局保育課が作成した「平成26年度福岡市保育所入所のご案内」によると、中央保育園は昼間部255名、夜間部45名の計300名の定員となっており、注釈で「平成26度から定員を150名増員」と記されている。保育課長によると新しい募集の案内を作り始めたのは10月頃から。「第2中央保育園」の建物の定員は135名。完成が間に合わなければ、来年4月の開園時、300名の募集に対応できないのは明らかだ。なお、募集の1次申込み締切日は12月13日。
工事中のまま開園となれば、園児の安全対策・保育環境にも大きな不安が残る。現・移転予定地に反対している同保育園の保護者の会代表は、「子どもを預ける保護者の1人として、工事中の保育園における安全対策や緊急事の避難経路について、市に説明責任をはたしてほしい」と語った。反対意見を踏みにじる形で高島宗一郎福岡市長が強行した移転事業だが、その理由の1つは、「東日本大震災を受けての園児の早急な安全確保」。工事中のまま開園し、安全性を損なうとなれば、本末転倒である。
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