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コダマの核心

企業・人、再生シリーズ(12)『公正無私』で作州商事を再興した樺島敏幸氏(3)
コダマの核心
2013年11月 2日 07:00

<御縁大切>
 福岡シテイ銀行・福岡相互銀行のOBで事業主になったお歴々で組織された【3Q会】という集まりがある。そうそうたるメンバーが結集している。
ある会議の集まりでのことだ。「コダマ社長久しぶりです!!私は銀行を定年退職してコンサルの会社をやっています」と挨拶してきた。確かに見覚えがあるA人物だ。「あー、貴方も事業主になったのなら、あの【3Q会】のメンバーでしょう」と応対した。
 「あの会ですか。半年間は付き合いましたが、所詮商売の広がりがありませんからもう参加することは止めました」という連れない返事をしてきた。「計算だけに走るこいつはたいした奴ではないな」と悟ったが、まずは裏付けをとってみた。出くわした会の座長のAに対する評は、「陰口が多い。仲間の有りもしないことを論評ばかりして評判が悪い。人様に貢献することは考えず利用することばかり先行している。脱退して頂きたい気持でいる」となる。顎で泳いできた典型的なバンカーOBのタイプである。
 
 当然、【3Q会】のメンバー内でも記憶に残る存在でない。くどくどとAの風体を説明すると「そういう男がいたな。あまり関係ないよ。何処に行っても信頼関係を築ける人物ではないな」という程度の認識存在である。これではたいしたコンサルビジネスを展開できないのは間違いない。目先のことばかりに先行する輩にはビックビジネスが転がってこないのは自明のこと。ところが樺島氏の作州商事の新社長就任を了解したことは凡人からみると異常を超えている。《御縁大切》の生き様は桁を外れている。
 
<無私無編>
kabasima.jpg 樺島社長体制がスタートした際に、筆者は同氏の意向を汲んだつもりで次のような論を展開した。「会社は公的な存在だ。私欲に走ったオーナーが逮捕された非常事態に陥った。社員、お客、得意先の為になる企業に造り返るには株の買い取りをすべきである。樺島社長の経営能力には金融団も評価して資金は提供するはずだ」とキャンペーンを張った。樺島社長の本心を理解していたつもりでいた。結果、こちらの浅はかさが露呈された。
 同氏も「オーナー逮捕を契機に根本的な組織変革の断行を即刻、実行する必要性」を痛感していた。「何よりも縁があって作州商事に就職した社員たちを守ってやる」強固な使命感に燃えていたのは事実であろう。そしてこの使命感を具体的に具現化、成就の目鼻がつくようになると普通の人間ならば欲が生まれる、私欲を抱く。俗物的な表現すれば変身するのである。「俺の力で会社を再生させた。俺がオーナーにとって代わろうか」となる。再生したとなれば、浅はかな筆者でも同様な野望を実現する行動を選択したであろう。
 
 だが、樺島社長にはそのような邪心が皆無だ。凡人が持ち合わせることのできない品性を有している。《無私無編》の表現がぴったりだ。あるゼネコンの経営者が樺島社長へ接待を誘った。「焼鳥屋しか行かないよ」という釘を刺された(結局は焼鳥屋の接待となった)。
 この公私のけじめの厳しさが社員のやる気を高めさせた。また故人になった未亡人のオーナー役に就いた城戸会長の信頼を勝ち取った。それが作州商事の再生のスピードを速めた要因になったのだ。

(つづく)

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