福岡とはどんな街なのだろうか。住みやすさには定評があるが、どんな魅力を抱え、どんな問題点を抱えているのだろうか。また、他県出身者はどんなことに少し戸惑うのだろうか。他県出身でこの4月から福岡に来たばかりの記者が、やはり他県出身で福岡に住んでいる方々に話を聞いて、よそものから見た福岡像をまとめてみた。ずっと住んでいる人には当たり前になってしまっている福岡の魅力や不思議さを再評価して、ビジネスに活かしてみてはいかがだろうか。
<誰もが認める福岡の素晴らしさ>
まず福岡について、他県出身者が皆認めるのが、食べ物の美味しさと新鮮さだ。なかでも、とくに魚の美味しさを挙げる人が多い。福岡では、ごく普通にスーパーで売られているものや大衆向けの居酒屋で出されているものでも、東京のデパートや高級店で出されるものより美味しいくらいだ。そのため、福岡でちょっと高級なお店で出てくるようなものになると、同等のものを東京などで食べるのは至難の業だ。九州産業大学経営学部の小野瀬拡准教授は、茨城出身。以前はイカが苦手だったそうだが、福岡に来てイカの美味しさに目覚め、今は大好物になったとのこと。
また、美味しいだけではなく、とにかく安い。統計上はちょっと安いくらいだが、主婦は野菜や肉や魚は東京の半分くらいの安さではないかと感じている。とくに原発事故後、首都圏では九州の食べ物はなかなか手に入りにくく、高くても売れるために、東京ではキャベツ1個が400~500円、豚肉や鶏肉は100g300円以上はする。
果物の場合、野菜、肉、魚ほどの価格差はなく、東京の3分の2程度くらいの感じだが、種類が豊富で新鮮だ。次々と現れる旬の果物を安く楽しめるというのは、実に幸せだ。
さらに、家賃の安さも魅力的だ。福岡はかなりの都会であるにもかかわらず、東京の半額くらいの感じだ。通勤至便な物件が多く、安いデザイナーズマンションなどもある。前出の小野瀬准教授は、「家賃、人件費、原材料費の安さは、ビジネスを展開するにあたってかなり有利な点だ」「人がたくさん集まるからサービス業の需要がある」「IT産業、デザイン業などは東京などで受注して、こちらで作業するといい」などと指摘する。
小野瀬准教授は、ほんの10分くらい車を走らせると、海や山があるという点も素晴らしいと言う。福岡市が振興に力を入れているということもあって、IT企業が福岡にたくさん集結してきている。これは、都会の便利さはあるのに海山にも近く、従業員のストレスを発散しやすいからだと以前IT企業から聞いたことがあるという。
鹿児島県出身で、筑紫野市で個人事業を営む加治幸博さんは、西鉄大牟田線などの交通網が発達しているため、近隣の市町村からの通勤も容易で、大量の労働力を確保できると指摘する。環境の良いところに安く住みながら、都会での便利さにも簡単にアクセスできる良さがあるともいう。しかし、そのように恵まれた環境なのに、それでも近年は、若者が福岡市に吸い寄せられてしまって戻ってこなくなり、地域の高齢化が進むという問題も生じているという。
2011年に福岡市民を対象に行なわれた「市政に関する意識調査」では、「新鮮でおいしい食べ物の豊富さ(87.6%)」「買い物の便利さ(86.1%)」「自然環境の豊かさ(78.0%)」「自然災害の少なさ(77.4%)」「交通の便(73.6%)」「人の親切や人情味(72.8%)」「医療機関の充実(69.8%)」「住宅事情(68.9%)」「物価の安さ(66.3%)」「芸術・文化水準(61.6%)」に満足しているという回答が6割を超えている。
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