太陽光発電市場は、新規設置増加しているが、供給が過剰となり価格下落も進行している。厳しい業界ではあるが、原発に代わるエネルギーとして、太陽光を求める声も依然として多い。そこに新しい付加価値をつけて提供してみてはどうか―常に新しい事業展開を求めて前進するファブスコ(株)(FaBSCo)。代表取締役社長の江藤邦彦氏は、今の時代に必要かつ大切なものは何かを念頭にアンテナを張り、情報を狩る。
<原発問題に対するジレンマと"人間は自然の一部">
――新たなサービスを加えることで、新しい事業も生まれそうです。
江藤邦彦社長(以下、江藤) JC原発の停止以来、企業はさまざまな新エネルギー技術を求めて、技術開発、研究も盛んに行なわれています。競争が激化すれば影響は受けざるを得ず、太陽光発電の分野もここ数年で後退していくと思っていました。しかし経産省は、今後も引き続き太陽光が普及していくよう、予算組みを考えていると発表しています。しかし、これで安心し、政府の動向を受身の姿勢で待つわけにはいきません。現在、各家庭でどれぐらいの電力を消費しているのか、また発電を行なっているのかを調査して、いつでも具体的な数字を示せるようにしています。また、インフラを整備して、メーカーに要望を投げ、販売店によりたしかなものを提供できるようにしているところです。
――関連製品への関心も高まっているようですね。
江藤 その点に関しても、関東圏と九州圏での温度差を感じますね。関東圏では、蓄電池が非常に良く売れています。私が訪れた栃木では、東日本大震災の際、3日間ぐらい停電した体験から、必要性を実感しているようです。しかし、九州ではそこまで関心を示すところは限られています。
ただ、これを「九州圏は管理意識が低い」と考えたり、「意識が低いところに、高めるための商品戦略を」などとは考えたくないです。仮にそうだとしても、意識が低いのは、必要性がないことの表れという場合もあります。心に響きもしないものを販売しても意味がありません。やはり、今、相手が何を望んでいるのか、よく調べて、適切な提案をしなくてはならないと考えています。
しかし私にも理想があります。たとえば、医療施設は無電源になっても治療できるものであってほしい。そのようなときに、蓄電技術は必須ですね。ニーズに合わせた手法について、ベストな提案ができるようにありたいと思っています。
――そもそも環境に優しいビジネスを、ということで起業されたわけですから、原発問題には関心がおありでしょう。
江藤 そうですね。たしかに原発に賛成とは言い難いです。
――ただ、多くの人が、「原発は、ないに越したことはないけれど...でも」というジレンマを抱えているのではないでしょうか。現実との兼ね合いをどうつけていくかが問題なのでは。
江藤 そうです、その兼ね合いは難しいです。しかし、ドイツのように、国が新エネルギーの導入を計画的に実践し、定着させているところがあります。すごいと思いますね。日本は原発に対しては多くの予算を投入してきたのに、安全性に問題が生じ代替エネルギーの必要性が問われたとき、なぜ同等の予算をつけて、大きなアクションを起こさなかったのかがわかりません。理想家と言われるかもしれませんが、人は地球体系の一部を担う動物であり、動物は自然のなかで生きるものなのだから、エネルギーの提供も自然に近いところで創出できるものを目指したいのです。
ゆくゆくは老建施設をやり、併設した畑で野菜をつくるという夢もあるのですよ。人を活動させるエネルギーも、できるだけ自然に近いものから摂れたらいいでしょうね。
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<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡市博多区博多駅前2-12-15
資本金:2,000万円
TEL:092-432-2323
URL:http://fabsco.co.jp/
<プロフィール>
江藤 邦彦(えとう・くにひこ)
1975年生まれ。(株)ヤナセ在職中に、太陽光発電ビジネスに興味を抱く。2010年には、15年間勤めたヤナセを卒業。ファブスコ(株)を設立。
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