福岡とはどんな街なのだろうか。住みやすさには定評があるが、どんな魅力を抱え、どんな問題点を抱えているのだろうか。また、他県出身者はどんなことに少し戸惑うのだろうか。他県出身でこの4月から福岡に来たばかりの記者が、やはり他県出身で福岡に住んでいる方々に話を聞いて、よそものから見た福岡像をまとめてみた。ずっと住んでいる人には当たり前になってしまっている福岡の魅力や不思議さを再評価して、ビジネスに活かしてみてはいかがだろうか。
<福岡の問題点>
前述の「市政に関する意識調査」では、犯罪の多さ、市民のマナーの悪さ、就業機会の少なさが不満との結果が出ている。
俱會さん親子が福岡に来て一番びっくりしたのは、デパートに置いてある休憩用の椅子に座って、買ってきたケーキやお寿司などを食べていることだったという。周りを気にしないおおらかさ、明るさがあるのではないだろうかと話しつつも、食料品の階だけでなく、他の階でもそうだったり、家族全員でそうしていたりということには違和感を覚えたという。
車の運転の荒さも全国的に有名だが、それは皆、実感していた。信号無視をよく見かけるし、車が左折するときに歩道に乗り上げることもある。駐車場に車を入れる関係もあるのだろうが、歩道を車が走っているのもよく見かける。福岡市職員(当時)による飲酒運転で3児が死亡した事故は、全国的にも有名になった。飲酒運転撲滅キャンペーンも行なわれたが、その後も死亡などをともなう飲酒運転は後を絶たない。またあまり知られていないが、性犯罪の多さでもワーストの常連になっている。
就業機会の少なさは、仕事を選ばず非正規雇用であれば、ある程度仕事があるし、物価が安く、非正規でも暮らしていけるのでそれほど問題化はしていないが、福岡市の非正規雇用率は、7月発表の就業構造基本調査によれば42.0%と全国平均の38.2%よりかなり高い。また、失業率も高い。
<他県出身者から見た福岡の不思議>
福岡のちょっと変わった点として有名なのは、学校で体育の際などに立ち上がるとき、「ヤーッ」と叫ぶことだろう。これには、子どもがいる他県出身者は皆驚いたという。
また、福岡では、東京と比べると買い物をしたときに、紙袋をもらうケースがずっと少ない。だからだろうか、エコバッグなどバッグを2つ抱えている人が多く、うち1つのバッグを斜めがけにしている人が結構いると俱會さん親子は言う。ショールを身に着けている女性が多く、売り場のマネキンがショールをして、バッグを斜めがけにしているのをよく見かけるという。
ほかに、福島では小さい頃から足はきちんとしていなければとしつけられ、外出時には替えの靴下などを持ち歩くのに、福岡の人は生足が多く、びっくりしたという。その代わり、帽子をかぶったり、髪をきれいに整えたりしている。帽子売り場がかなり充実しており、不思議に感じていたところ、あるとき、福岡の人に「小さいときから頭だけはちゃんとしておくようにと言われていた」と聞き、足を大事にする福島と、頭を大事にする福岡の文化の違いを感じたという。そうした文化の違いからか、福岡では長靴がほしくてもなかなか売っていなくて困っているという。
記者自身はまだ経験していないが、花火にも福岡らしさがあるとの指摘があった。関東では、連続して花火が打ち上げられ、轟音の下、隣の人と会話するのも難しいくらい。さらに皆で飲み騒ぐ。ところが、福岡では、花火が上がるのに少し間隔が空く。NHKの生放送では、その花火の合間に亡き人を偲ぶお便り紹介があるという。「同じ花火を楽しむにしてもずいぶん違う」と、俱會さん親子は言う。
土地が違えば、文化や風習が違うのは当然。福岡は、全体としてはとても暮らしやすい良い街なので、他県出身者の多くは、そのなかでそれまで住んでいた街との違いを日々楽しんでいる。「福岡の人たちは、この地の良さやほかとはちょっと違う点に気がついていないかもしれない」と思いつつ...。
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