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コダマの核心

企業・人、再生シリーズ(13)『公正無私』で作州商事を再興した樺島敏幸氏(4)
コダマの核心
2013年11月 5日 10:19

<ディスクロージャーの徹底>
 前オーナー社長・城戸辰徳氏は、凄いリーダーシップを発揮してきた。「銀行マンの私が一から事業を起こし発展させるのは無理だ。城戸社長が確固とした事業基盤を残していてくれたから、事業再生が可能だったのだ」と、樺島社長は率直に前社長の経営能力を評価する。しかし、オーナー経営にありがちな負の経営遺産が残った。良い意味でも悪い意味でも、公私混同の経営手法の改善スケジュールがテーブルに乗ったのだ。

kabasima.jpg 樺島社長の銀行マンとしての最後の役職は、審査副部長である。融資先の選別を行なってきた業務だ。「どうすれば会社が潰れるか、潰れないか」を数多く処理してきた。このスタディケースを応用することが、緊急の課題であった。代表オーナーが脱税逮捕で社内は不安感が蔓延し、銀行団も疑心暗鬼で模様眺めである。樺島社長が意の一番に取った施策が、『ディスクロージャーの徹底』(情報公開)であった。社内にも銀行団にも、この施策を徹底した。「会社の内容は悪くない。努力をすれば一段と進化する」と認識の共有できたことで、社員たちは業務に専念するようになった。銀行団も従来通り、事業資金の融資を継続してくれた。だからこそ、商品土地の仕込みは円滑に続行できた。

 2008年9月のリーマン・ショックで、またまた同業他社が倒産の憂き目に遭った。このバブル崩壊の危機対応では、樺島社長のバンカーとしての蓄積スキルが如何なく発揮された。創業者オーナーにありがちな見栄を殴り捨てて、「いかに企業を継続させるか?」の一点に絞って、グループの事業再生に果敢に挑戦した。マンション業界での『200億円を超えるトップ』の地位にも未練は皆無であった。商品土地も更地で同業者に譲った。

 加えること、関連企業のリストラ・転売を実行した。グループ従業員400名を140名にまで圧縮したのである。10年3月期には当期利益で7億8,000万円の赤字を計上した。あらゆる負の資産を償却したのである。リーマン・ショックを経た2期目の決算で膿を出し切ったのは流石、スピード経営手法には感服する。負の資産を償却すれば、無理なことをせずに済む。この3期の年間販売実績数は300戸台で推移している。「200戸供給で会社が廻る作戦を練っている。また、マンション分譲だけでなく、あらゆる収益事業も取り入れていく意向だ」と、樺島社長は将来の戦略概要を披露する。
 以上、同氏のバンカーのキャリアを踏まえた、卓越した経営手腕を紹介した。ただ、技量だけでは問題解決にはならない。
 やはり最大の再生への要因となったのは、同氏の人柄である。スポットライトを当ててみよう――。

<無私無偏でオーナーの信頼を勝ち取る>
 作州商事に対する巷のゲナゲナ話として、現在オーナーの位置にある会長・城戸章代氏との反目風評があげられる(城戸章代会長は先代妻女で、同社のほぼ100%掌握する株主)。「章代会長が娘婿を『次の後継者に』と横車を押している」というものだ。
 巷の話は、何でも面白おかしく囁かれるものである。遠慮なく率直に樺島社長に質問した。すると、「娘婿の件は、私が会長に提案したものだ。実際、私が勤務先にスカウトのお願いに行った。この嫁婿は、次の後継者候補の1人として鍛えていく所存だ」との回答があった。

 福岡シティ銀行出身で、権力に燃えて不動産業界の一党の旗印を立てようとしている輩もいる。長きにわたっておべっかを使ってオーナーに従属してきたが故に、屈折した感情を抱いてきた。「俺はオーナーになって、ビジネス人生を成就したい」と公言しているとか。まー勝手にやってくれ。仮の話をしても仕方がないが、もしこの人物が作州商事に再就職していれば、手柄話を吹きまくって会長に不信感を与えたことだろう。そして、反目・対立という事態は必然だったに違いない。

 樺島社長の対する、バンカー時代の同僚の評を紹介してみよう。「表には感情を露わにしないが、非常に芯の人だ」「与えられた職責は150%達成する人だ」、「筋が通らないことは、上司にも安易に妥協しない、迎合しない男だった。ただし、部下の面倒はトコトンみていたな」「良い成績を上げても、自分の手柄にするような自慢話をするようなことはなかった」等々である。
 一番、印象に残ったのは『公平無私』というか『無私無偏』という樺島社長の特性である。だからこそ、城戸会長の全幅の信頼を得られ、『作州商事の再生・飛躍の舵取り』に専念できたのであろう。

(了)

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