<水道、ゴミ処理などで進出>
昨年3月に横浜市とフィリピン・セブ市が協定を結んだ。JICA(国際協力機構)の後押しもあり、水道事業で横浜市の横浜ウォーターや、ゴミリサイクル事業で萬世リサイクルシステムズなどが現地へ進出。行政同士が手を結ぶことで、企業同士のビジネスマッチングを図っている。
横浜市共創推進室の野村室長は、「行政と行政、企業と企業が一体化を図って、効率化する。アジアの活性化にもつながって、横浜市にフィードバックされるのではないか。1867年の横浜開港以来、海外と交流して発展してきた。そのDNAが横浜にはある」と、今後も、アジアなど海外と交流しながら、市の活性化を目指す。横浜市の公民連携によるインフラ整備技術協力の輪は、アフリカなどへ広がっている。
<フィリピンで活躍する横浜ウォーター>
フィリピンのセブ市に進出し、現地企業とともに下水道事業を手がける横浜ウォーターは、横浜市の水道局が、100%出資して設立した会社。横浜市が、発展期以前から培ってきた下水道整備、管理に関するノウハウを持っている。
JICAの公募に応募したのがきっかけで、フィリピンのセブで事業を展開することになった。セブ島も観光地で、海外から多くの観光客を受け入れている。しかし、下水道の整備状況は、人口増加に対応できていない。経済発展で都市部に人口が集中し、セブ市と周辺の島や近隣の町を含めた都市圏メトロ・セブでは、人口255万人を超えるほどになっている。
横浜ウォーターの永井康敏取締役は、「40年前ぐらいの横浜市の状況に似ていると思う。観光誘致などでさらに発展していくには、下水道を集中的に管理するシステムを作らないと対応できない。それを横浜は長年やってきたし、横浜ウォーターは、そのノウハウを持っている」と、現地のニーズと、横浜ウォーターが持っている技術がマッチしたと語る。
横浜市のY-PORT事業などで先行してアジア各国に出ていった企業が、日本の技術、インフラ整備の広告塔の役目も果たしている。横浜ウォーターでは、さらに協力の形を一歩進めて、上水道でも技術、ノウハウの提供を行なうことを検討中。「日本のように飲める水を現地で作ろうという目標を立てています。日本の技術にはすばらしいものがあり、水道事業のようにアジアで必要とされているものは多い。横浜ウォーターは、ほかの日本のメーカーを一緒に向こうに連れていくビジネスマッチングの役目も担っていると思います。横浜はアジアの都市よりも先に発展したので、水道事業に関して、10年後、20年後に"こういう姿を目指してはどうですか"と提案できる。特にフィリピンのセブでは、横浜と似た観光地なので、都市整備の苦労や悩み、都市計画の課題が似ていて、お互いに通じ合えている」と、技術者でもある永井取締役は、アジアでの技術貢献に意気込んでいる。
技術面で国際貢献する横浜市。60年代の飛鳥田市長の時代から信条としてきた市民と対話する姿勢、"市民参加"のソフト面も、セブ市やアジアの各都市に輸出できるのか。こちらも見ものだ。
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