連日、日本の国際ニュースで報じられる「北京の大気汚染」。発癌性も指摘されている大気中のPM2.5の濃度は、1m2あたりで連日「300」マイクログラムを超え、日本の基準値をはるかに上回る。劣悪にも見える状況下、北京の人々はどのように暮らしているのだろうか・・・。
大気中のPM2.5の濃度が1m2あたり426マイクログラムを記録した11月2日。市内は、一面が真っ白だった。朝晩は5度近くまで冷えこむこの時期の北京。冷え込みとともに霞む景色なら「霧」のようでもあるが、日中は15度近くまで上がり暖かさも感じるのに昼間でも「真っ白」なのには、違和感を覚える。街を歩く欧米系の外国人、オートバイに乗る女性以外は、ほとんどマスクをしていない。日本の新聞メディアで報じられる「マスクをして歩く人達」の写真は、特別な場所(もともと排気ガスが多い道路など)を記者があえて選んで撮影したものと推測される。
北京在住の中国人女性に聞くと「昨年末から霧が出るようになった。人も車も多い街だからしょうがない。以前はマスクをしていたけど、もう面倒臭くてしていない」と話す。記者の知人でも、マスクをしているのは「主婦の女性」一人だけで、子育て中の立場で環境問題には敏感になっているためだ。大多数は「初めはマスクをしていたが面倒くさくてやめた」という状態・・・。
街なかは、やはり「すす」のような匂いがする。野焼きをしたあとの草原、焼却炉近く、可燃物を燃やした後のようなイメージだ。深く吸い込みたくない空気ではあるが、もともと北京は「ホコリっぽい」空気がある。PM2.5の数値が叫ばれる以前から「空気はもともとキレイなものだ」という概念がない。発癌性の指摘について触れても「どうせ人間は死ぬ」と楽観的。また、中国大陸では「喫煙文化」が根付いており、受動喫煙も習慣化している。「肺や呼吸器をいたわる」概念が日本に比べて薄く、大気が白くなっても、日本ほど深刻には受け止めていない。とはいえ、仕事中、あちこちで咳をしている中国人の姿は多い。汚染された大気に「慣れていない」日本人ならば、北京でしばらく外出すると頭痛を覚えることもある。
それでも、一晩明けると、状況が一転する。朝から夜まで真っ白だった11月2日の北京だが、11月3日は、空気の白みが無く、澄んでいる。北京在住の放送関係者に理由を聞くと「風の影響だ」と言う。北京は、時折、何事もなかったかのように視界もはっきり見える日もある。2日は1m2あたり「25~46」で推移。すすのような匂いも消えた。偏西風に乗って、中国東北部から襲ってくるとされるPM2.5の粒子。北京在住中国人の多くは「車が多い」などの「人工的要素」は認めつつも、「所詮自然の仕業で、太刀打ちできない」と考えている。「マスクを毎日するのは面倒くさくなった」というのが本音。消えることを強く願ってもいないし、別に存在を恨んでもいない。「なるようになる」と意に介さないのが北京の大多数である。
ちなみに、11月4日午前8時では、PM2.5は「132」を記録している。
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