2012年4月に町制施行90周年を迎えた高千穂町(宮崎県西臼杵郡)。「天孫降臨の地」と言われ、日本中で知られる名高い歴史のまちだが、深刻な過疎化問題を抱える地域自治体の1つでもある。その高千穂町の特産物が、今、福岡などで開かれる数々のイベントで脚光を浴びている。職員を率先して自ら経営手腕を発揮する高千穂町長、内倉信吾氏への取材をもとに、高千穂町の魅力を再考する。
<東九州自動車道の開通で観光客が増加>
高千穂町は、天孫降臨伝説の残る地で、全国有数の観光地だ。訪れる観光客もことし(13年)は140万人を超えると期待されている。
経済効果は12年の例を上げると、観光客数が137万2,600人で、消費額が35億1,618万2,927円。一時、九州北部豪雨の影響で低迷したが、通年では前年比1.4%増加した。
要因としてはまず、古事記編さん1,300年の記念の年だったことが考えられる。次に、東九州自動車道の高鍋~都農間の開通によって県内から高千穂へのアクセスが良くなった影響が、県内からの観光客数が伸びているところに見て取れる。
宿泊数も前年比2.4%増加した。しかし観光者数に比べて少ないのが課題だ。民間の宿泊施設数33施設、受け入れ可能人数1,395人。「これらの施設が満館となることを目指し、経済効果を高めたいものです」と内倉町長は語る。
<神々の里に必須の神楽献上酒を限定販売>
温泉は宿泊時の楽しみのひとつだが、高千穂には2つの温泉がある。1994年4月にできた天岩戸温泉は新しい温泉だが、すでに歴史の里・高千穂町のブランドとして、すっかり土地に馴染んでいる。春には敷地内に咲く桜を楽しみながら地域総出で花見の宴を繰り広げるという「桜まつり」が開催される。
内倉町長は、「全国で認められた天孫降臨の地・高千穂町には、たくさんの神社があり、たくさんの神様がおられるのです」と語る。「古事記」「日本書紀」の天岩戸伝説の舞台、「天岩戸神社」をはじめ、「続日本書紀」に記されている「高千穂神社」、天孫降臨の地「くしふる神社」など、観光客の多くは神社巡りを楽しみに訪れる。芸能の神として知られる「荒立神社」には、毎年芸能人が多数訪れる。そこで神社に奉納する日本酒の製造にも力が入るようになってきた。
宮崎といえば焼酎、というイメージが先行するが、棚田が美しい高千穂町の風景を見れば、良い酒米が収穫できそうな期待も芽生える。高千穂の神楽では、1年の五穀豊穣に感謝し、来る年の豊作を願って舞と共に酒が奉納される。そのために特別に作られたのが高千穂神楽献上酒「舞」だ。高千穂産の酒米「はなかぐら」を100%使用した。高千穂町内限定販売の純米酒だ。まさに、高千穂町でしか味わえない逸品である。
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