東証一部上場の「船井総合研究所」(船井総研)。経営コンサルティングの草分け的存在である船井幸雄氏が創業したコンサルタント会社だ。その子会社に「船井メディア」という会社がある。東京都港区のビルのなかに本社を置く。今年8月まで、代表者は野々垣健五という人物だった(登記上は8月30日付で辞任)。業務内容は、同社の最高顧問でもある船井幸雄氏のCDやカセットの販売、月刊誌の発行。登記簿謄本の目的欄に、コンサル業務は謳われていない。もちろん、弁護士事務所でもないわけで、法律相談ができるわけでもない。
この船井メディアが、昨年3月、法人税法違反などの疑いで福岡地検の家宅捜索を受けた。福岡市の企業が起こした脱税事件に関連する捜査の一環だったが、東証一部上場企業の子会社には似つかわしくない話。記事にした新聞もあったが、扱いが小さかったうえ、社名が伏せられていたことで、世に知られることはなかった。
脱税事件と船井ブランドの間にどのような関係があったのか、大いに興味を引かれる。特別取材班が調べを進めるうち、8月まで船井メディア代表だった野々垣氏が、脱税の疑いで逮捕・起訴されたある企業から、多額の現金を引き出したかたちとなっていることが明らかとなった。取材で確認された金額は10億円以上。脱税が事実だとすれば、船井メディアはその上前をはねていたことになる。裏づけを行なうため、大阪、東京、愛知の関係先に長期取材を敢行、その実態に迫った。
<アースハートから巨額資金流出>
脱税事件を引き起こしたのは、福岡市に本社を置く「アースハート」。病気を治すことができる手かざしパワーを体得させるという謳い文句で、セミナーを開催。受講料として1人当たり70万円を支払わせていた。会員数は数万人とも言われ、全国に拠点を構えている。同社には2010年に国税当局が査察に入り、今年1月、福岡地検が法人税法違反(脱税)の疑いで強制捜査に踏み切った。同社の現・元代表者らが逮捕・起訴され、現在も刑事裁判が続いているほか、元会員らがセミナー代金の返還を求めて集団提訴、こちらも係争中だ。
刑事事件において詐欺罪の適用が見送られたのは、実際に病気が「治癒された」とする多くの会員がいるからだという。記者も複数を取材したが、「騙された」と話す元会員もいれば、「アースハートのおかげで助かった」という現・元会員がいる。要は、気の持ちようということか。
アースハートの脱税額は約9億円。30億円近い所得隠しがあったとされる。そうした豊富な資金のなかから、一部のカネが、船井メディア代表・野々垣氏の斡旋で、紹介先に流れていたことがわかった。その額、何と約14億円。途方もない金額が、アースハートから流出していたことになる。
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