2012年4月に町制施行90周年を迎えた高千穂町(宮崎県西臼杵郡)。「天孫降臨の地」と言われ、日本中で知られる名高い歴史のまちだが、深刻な過疎化問題を抱える地域自治体の1つでもある。その高千穂町の特産物が、今、福岡などで数々のイベントを主催し脚光を浴びている。職員を率先して自ら経営手腕を発揮する内倉信吾高千穂町長への取材をもとに、高千穂町の魅力を再考する。
<高冷地という立地を活かした質の高い特産物>
福岡市内から高千穂町まで車で3時間ほど。高森、阿蘇につながる国道325号線はバイパス整備も行なわれ、11年に河内バイパスに架かる橋梁工事が完了し、非常に便利になった。国道218号も現在は、高千穂から五ヶ瀬、蘇陽まで九州中央自動車道の一部となる新直轄方式で事業化してもらおうと、国交省に請願している。「沿線自治体みんなで協力して願い出ているので、先が明るいと思っています」と、内倉信吾高千穂町長は顔をほころばせる。道路が整備されると企業も誘致しやすい。今後、宮崎県北の日向市に木材企業が入ってくる予定だが周辺町村の雇用も増えると見込んでいる。高千穂の木材は他の地域より木目細やかでしっかりと詰まっているということで評判が高く、単価も高い。
農産物についても、若手職員が中心となって品質の高い作物の開発および生産拡大に努めている。特に花栽培では、ラナンキュラスが現在、生産量において肩を並べている長野県松本市を抜いて日本一を目指している。高千穂のラナンキュラスの花持ちの良さは、高千穂が高冷地であり、農産業は300~1,000mの高低差のなかで行なわれていることにも関係する。強くて色が良い。葉もきれいだ。
取材の数日前、内倉町長自らJA高千穂地区の組合長と一緒に福岡へ行って泊まり、早朝花市場へ売り込みに行った。非常に評判が良かったという。「お勧めできるものは、花以外にもたくさんあります」と、内倉町長。その1つ、完熟きんかんは宮崎県自体高い評価を受けており、「たまたま」という宮崎ブランドがある。高千穂地区ではそのなかでも一級品と言われる「たまたまエクセレント」の収穫率が高く優秀な産地となっている。今年はトマトの売上も良かったという。
<日本一の高千穂牛と新名所の「がまだぜ市場」>
しかし特産物といえば、何といっても高千穂牛だ。宮崎の牛は、すべて高千穂牛が源になっているという。07年の「第9回全国和牛能力共進会」で、農林水産大臣賞を獲得するなどして宮崎県が日本一に輝いた。現在JA高千穂地区管内で繁殖雌牛を4,900頭育てている。
この高千穂牛を存分に味わえる本格レストランが高千穂牛を中心とした特産物直売所「がまだせ市場」にある。この施設は、内倉町長の公約のひとつ、「地域の市場の活性化」の一環で生まれた。「がまだせ」とは「精を出す、よく働く」という意味だ。レストランのほか、ミートセンター、農産物直売所、観光案内所がある。運営が軌道に乗るまでは大変だったが、現在は毎日観光バスが乗り入れ、月に数回取材を受けるなど、高千穂の新名所として親しまれている。
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