<根拠を示し規制強化>
東京流「ID環境対策」は、大気汚染の深刻化を未然に防いだ成功例と言えるだろう。省エネや環境技術の進歩、行政による規制、補助金などによる支援が早い段階でうまく機能した。
規制を行なうには、何らかのデータによる根拠が必要だ。東京都は、東京都環境科学研究所を設立(現在は公益財団法人。68年に設立)し、研究機関によるデータ収集と解析に努めた。事業者に規制をかけることができたのも、研究機関によるデータ解析の結果(根拠)があったからと言える。化学物質の排出量調査、発生源の特定、自動車排ガスの計測、データ解析などを行ない、この解析結果を根拠にして、規制を行なった。排出基準が高まったことにより、排出ガスなどを抑える技術も進歩した。
<データ分析法、管理体制など学ぶ北京市>
北京市の環境保護局の方力副局長らは、東京都の研究機関を視察し、その運営のノウハウに関して意見交換を行なった。中国の環境保護局では、日本以外にも、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランスなど先進技術を持っている国を視察済みで、先進国の成功事例を自国のケースに取り入れようと力を入れている。東京都の視察については、猪瀬直樹東京都知事の呼びかけで実現した。
31日に訪れた東京都環境科学研究所では、研究員から、データ解析方法、発生源の特定方法、事業所・工場などからの化学物質の排出量などの把握方法などを熱心に聞き込んだ。
政策研究と策定、環境計画などを担当している北京市環境保護局研究室の宋強主任は、「北京市が取り組んでいる大気汚染防止のための第12次5カ年計画のハードルは高い。東京都に視察に来て、すぐにでも取り入れたいと思ったポイントが2つあった。1つは、ディーゼルカーによる大気汚染の削減手法。それと、工場でのPM2.5など大気汚染物質の削減手法です。工場のほうは、技術というよりも、全体の管理体制に学ぶところが多かった。これを環境保護局に持ち帰って、具体的にどう対応していくか検討する」と語った。東京都の取り組み、対策法を実地で視察したことで手がかりをつかんだようだ。
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