中央保育園移転問題を通して、保育行政をはじめ、高島市政の子どもたちに対する姿勢にさまざまな疑問の声があがった。7日、ニュースサイト「NET-IB(ネットアイビー)」を運営する弊社((株)データ・マックス)は、この問題をテーマとしたシンポジウムを開催。パネリストとして、現在の移転予定地に反対する保護者や弁護士を招いた。会場には、幅広い世代の市民が集い、移転事業の概要、反対意見およびその理由について、熱心に耳を傾けた。
なぜ、あの場所なのか――。頻繁に交通渋滞が発生している移転予定地・前面道路の安全対策や、隣にパチンコ店、50メートル以内にラブホテル2軒が立つという周辺環境に対する疑問が出発点だった。保育士からも疑問の声があがるなか、保護者の問いに答えようとしない保育園と福岡市。議会の承認を受けていた現地建て替え計画の変更や土地選定・取引をめぐる疑惑も浮上し、不信感は募る一方。市民の代表である市政の最高責任者・高島宗一郎福岡市長は、面談した保護者たちの質問に答えないまま、面談の翌日7月17日に事業再開を指示した。
移転事業の経緯について、その都度、パネリストの保護者から市の対応の内容について説明がなされた。現在、反対運動を行なっている保護者の会は、現・移転予定地のことがきっかけで結束するようになった。決して社会運動家などではない市民であり、皆、自分の子どもを大切に考える普通の親であった。「市税が投入される以上、中央保育園移転事業は市民全体の問題」と、保護者は訴えた。
新保育園の移転・建設の禁止などを求める仮処分申立に携わる園児・保護者側の弁護士は、移転事業の内容は取り合わず、「次年度以降の保育園の内容に対し、園児・保護者が口をはさむ権利がない」とした市側の主張を説明。「小学校などへの就学時までを保育の実施期間」とする福岡市保育の実施に関する規則や厚労省の通達との矛盾を指摘した。すでに移転予定地の土地購入費約9億円の返還を求める住民訴訟も始まっており、今後、司法の判断が注目される。
質問・意見交換の時間では、複数の参加者が手を上げ、積極的に意見を述べた。移転事業を決定した2011年7月26日の市政運営会議については「市政意思決定過程を透明化することを目的として設置されたはず。それが不透明なのはおかしい」と市職員OB。保育関係者からは、「1法人の2カ所の保育園に補助金を出すのは認められていないはず。新保育園を1つとする市のやり方はアンフェアだ」との声があがった。新・中央保育園は、2つの建物に分かれる設計だが、市側は、「2つの建物がつながっているため、1つの保育園」と主張している。一方で、県への申請で、新・中央保育園を第1、第2と2つの保育園に分けていたこともわかっており、アンフェアとの誹りは免れないだろう。
そのほかの参加者からは、「パチンコとラブホテルの横、狭い道路の危ない場所に保育園を建設するなんて、児童虐待だ」(30代男性)、「子どもがないがしろにされていることは許せない。みんなでしっかり考えていかないとたいへんなことになると感じた」(60代女性)、「子どもは国の宝。大人たちが守ってやらなければならない。今の市のやり方は、福岡市民として恥ずかしい」(70代男性)といった感想が聞かれた。
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