<原鶴温泉の古式ゆかしき伝統を新たな魅力に>
――地域を愛する若者が育ちつつあるなか、原鶴温泉自体は、活性化を目指し、今後どのような点をアピールしていきたいとお考えなのでしょうか。
林恭一郎代表取締役(以下、林) 原鶴温泉は一番の魅力はその泉質です。単純硫黄泉、弱アルカリ性単純温泉なのですが、古い角質を落とし(アルカリ性単純泉)余分な皮脂を取り除く(硫黄泉)という美肌に良いとされる2つの泉質を持つことから「ダブル美肌の湯」 と称されています。温泉の権威の先生にもこの2つの泉質が含まれているのは全国的にも珍しいとお墨付きをいただいております。また、この地域は農業も大変盛んな土地でもあり、食のPRとして、各旅館の調理人の皆さんにもアイデアを出してもらい、「原鶴に来ればこれが食べられる」というような名物料理をつくりたいですね。
――美肌に良いというのであれば、若い女性にとっても十分な魅力となりますね。また、泰泉閣は、浪漫ムードが漂うアンティークな雰囲気も魅力的ですね。
林 ありがとうございます。うちはアンティークというよりも、どちらかというと昭和レトロな雰囲気かもしれませんね。また、当館だけでなく、当地は日本古来の原風景を思わせる自然をそのまま楽しめるところですから、土地そのものを含めて、古き良き日本を感じたいという方々に親しんでいただけていると思っています。鵜飼いのように、ここでしか見ることができないような漁法も残っています。
――ほかにも、当地ならでは取り組みがあるとおうかがいしましたが。
林 そうですね。現在、原鶴温泉では、絶滅危惧種の「ハナシノブ」という花を旅館や商店の女将さんなどの女性で組織する「湯里おこしの会」が栽培を行なっています。地元朝倉光陽高校の先生による指導で、今年も6月には原鶴温泉の随所で見事に花を咲かせました。
――花しのぶとは、奥ゆかしい名前ですね。
林 見ていて落ち着く花ですよ。花言葉は「お待ちしています」です。温泉街にぴったりの花です。侘び寂びの美を体感できると言いますか、自然に溶け込みそうなほど控えめな美しさに、安らぎを見い出される方も多くいらっしゃいます。
――そのような繊細なものと触れ合うことによる感動は、福岡市ではなかなか得られないものかもしれません。都市は周りに、日本らしい自然の風景を味わえる場所があることで、力を維持できているようにも思いますね。周辺に自然豊かなまちがないと、便利な都市、というだけで終わってしまいそうです。
林 九州新幹線の開通によって、福岡都市圏から短時間で当地へ来ていただけるルートがさらに増えましたから、私たちも多くの人に訪れていただけるように、街の魅力を育てて、発揮していきたいと思っています。
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<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡県朝倉市把木志波20
資本金:1,600万円
TEL:0946-62-1140
URL:http://www.taisenkaku.co.jp/
<プロフィール>
林 恭一郎(はやし・きょういちろう)
1975年、長崎市生まれ、福岡県太宰府市育ち。筑紫丘高校・立教大学法学部卒業後、2010年に(株)泰泉閣代表取締役に就任。老舗旅館の3代目代表として温泉街の復興に尽力している。趣味は映画鑑賞、スポーツ観戦。
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