胡同(フートン)は、北京に古くから住む市民の伝統的な生活圏で、細い路地の中に形成されている。生活エリアだがあるが、伝統的な建築様式があるため観光客も訪れる。特に人気のエリアが、美しい湖(前海、後海)に近い「南鑼鼓巷」エリアにある胡同だ。
土産物屋や食堂も並ぶ南鑼鼓巷エリア。しかし、共同トイレが基本の胡同、食堂は不衛生で、観光客に受け入れられていない。そんななか、欧米系、台湾、韓国、日本など、世界の観光客から気に入られている「カフェ」がある。台湾人シェフ・董孟浩さんが経営する「Cafe de Sofa」だ。董さんは台湾で飲食業の修行を積み、2009年から北京でカフェをオープンさせた。
「自分の祖父はもともと北京から台湾に渡ってきた。自分もいつか北京で飲食店を開きたいと思っていた」と話す。開店したのは、台湾と中国大陸の関係が親密になってきた時期で、「台湾から北京にやってきた頃は、生活が不便に感じられた。冬になると冷え込む気候は耐えられず、何度も風邪をひいた」と当時の苦労を語った。飲食業を始めるにあたっての手続き上の煩わしさやトラブルも多かったと言う。
それでも、台湾人ならではの細やかなセンスと、台湾で磨いた料理の技術で、オープンさせたカフェは人気店へと成長した。狭い面積ながら、1階から屋上3階に席が用意され、屋上の座席からは、胡同の家屋や沈む夕陽を眺められる落ち着いた雰囲気だ。
衛生面もクリアした。北京テレビや深圳テレビなど、北京で撮影される料理番組に「一流シェフ」としてゲスト出演する機会も多い董さん。カフェは、サンドイッチやパスタなど洋風のメニューも多いが、なかでもお薦めは「台湾魯肉飯」(36元/約550円)。台湾で食べられているものより脂身を減らして、ヘルシーさを強調している。それでも、味わいは深く、まさに「北京で味わえる本格魯肉飯」と言ってよい。コーヒーともよく合う。
「北京で店をオープンさせた当初は、現地の人たちともコミュニケーションがうまく取れなかったが、今では北京の友人も増えた。胡同に観光する人や留学生らも訪れ、帰国後に手紙をくれたり、再度の訪問の際に立ち寄ってくれたりしている。北京人にも外国人にも『仲間』が増えたことが大きな収穫」とカフェ開店後の手応えを語る。
「現在、2号店開店に向けて準備を進めている。より多くの人に北京での時間を楽しんでもらい、私自身も世界各国の人々と更に交流を深めていきたい」と、董さんは今後の展開と目標について語った。
■Cafe de Sofa
住 所:北京市西城区銀錠橋胡同12号
営業時間:午前11時~午後10時(月曜日定休)
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