<実店舗と他媒体を統合したチャンネル作り>
では、WEARをはじめとするショールーミングアプリは、流通業界にとっての好機を捉えることはできないだろうか。
米国の百貨店はアパレル商品は買い取りで、自店で商品を管理できるため、Eコマースにも積極的に踏み込んでいる。ショールーミング化はむしろウエルカムで、オムニチャンネル・リテイリングは経営上欠くことのできない戦略と位置づけられている。その行きつく先は紛れもなく「顧客創造」なのである。
通常、ネットを利用するお客は、買いたい商品を決めている「目的買い」が多い。だから、グーグルなどに商品名などを入力して、お目当てのサイトへジャンプする。同じ商品を扱っているサイトはいくつもあるから、レビューや評価の星数、あるいは価格などを参考に商品を購入するかを決めていく。そこでは買い物の楽しさはなくなっている。
逆に実店舗では、ウィンドウショッピングで気に入った商品を見つけ、試着したり接客を受けたりして、何となく購入に至る「衝動買い」が起こることもある。
つまり、ネットを利用する目的買いのお客に対し、ショッピングのドキドキ感や感動をいかに提供するか。また、実店舗を訪れたお客にいかに衝動買いに至らせるか。そのためにオムニチャンネル・リテイリングを活用することが大事なのである。
<メディアミックスの活用が遅れている>
現状、百貨店やデベロッパーは、販促ツールとして定期的にチラシやカタログ(フリーペーパー)を制作。そこで商品はモデル着用や置き撮りで紹介され、1ブランド1コーディネート程度。それを店頭設置または配布、いいところ新聞折込みで拡散するに過ぎない。
Webサイトもあるにはあるが、百貨店が一部の商品で通販に乗り出したくらいで、課金の仕組みをもたないデベロッパーのものは、未だ情報発信の域を出ない。
最近はテナントスタッフがブログなどを利用して商品紹介を行っているが、動画機能などを駆使して商品のディテールや着こなし、実際の接客にまで踏み込むところは皆無だ。
各媒体が別個に機能し、連動性がないため、販売チャンネルとして実効力に乏しいのである。印刷技術がものをいう紙媒体、クリエーターの能力に頼るグラフィック&Webデザインは、制作にかかる時間とコストの割に効果の程が限界に来ていると言わざるを得ない。
一方、実店舗はというと、施設の集客策に頼ってお客を集め、ディスプレイなどでお客の注意、興味を引き、来店すれば接客販売するだけ。しかし、お客に来店してもらえなければ接客にも移れないし、これ以上売上げを伸ばすことは限界だ。
少子化、オーバーストアの状況を考えると、これから1店あたりの来店客数が増えるとはとても考えにくい。
つまり、チラシやカタログ、Webといった従来の販促ツールと実店舗のリアルな接客機能を販売チャンネルまでの格上げし、それぞれが別個のものではなく統合・再構築していかなければならないのである。
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