<研究機関の運営ノウハウに高い関心>
北京市の大気汚染には、周辺都市からの移流も絡んでいる。周辺都市と協調し、対策を進めていくことにも課題がある。中国における規制は、都市や省によって千差万別。北京市が研究機関などの充実を図り、人材を育成し、環境規制において、周辺都市をリードできるかどうかにかかっている。データによる裏付けをし、規制する根拠を示し、大気汚染の根源を立つことができるのか。視察団長の北京市環境保護局の方力副局長は、研究所の運営方法、研究員の評価方法など、具体的に研究所を運営していくことに高い関心を示していた。
北京市視察団が東京都から学んでいったのは、日本の環境技術だけでなく、工場など事業所の管理体制、環境保護に関するデータの取り方やデータ解析の方法、分析結果の活用法などである。
<北京市が中国全体をリードできるか>
中国では、1980年代の経済成長期から現在に至るまで、環境保護よりも経済発展が重視され、北京、上海、重慶など大都市で大気汚染が深刻化。1990年代から、「空中鬼」の異名を持つ酸性雨などが社会問題化しているが、内陸部の経済発展が沿岸部よりも遅れてスタートしたために、規制のルールが中国全土で統一されずにきた。東京都が歩んだ、「適切な規制」までの道のりを、ほかの都市・省に先んじて北京市が歩いていく。
中国政府の出した第12次5カ年計画では、規制を強化する方針だ。濃度規制は守られているようだが、内陸部で経済発展が重視されているため、排出総量が増えていることに加え、自動車の普及が急激に増加したことも問題を深刻化させている。国有企業による燃料規制や排ガス規制への反発も、問題解決が遅れている背景にある。
経済発展と環境保護のバランスをとり、中国全体の流れとして、環境保護のためのデータを示し、適切な規制をかけていくことがポイントとなる。
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