<それでも東京に行かなくちゃー>
【東京の独り勝ち】を論評しても商売をしている以上、企業の拡大を図るためには東京市場に打ってでるしかない。東京の大市場で基盤を築いた企業の実例は、数多くある。福岡県の企業の出世の最近でのトップの例はタマホームであろう。東京一部に上場した。その他でアパマングループなど実例は数多い。飲食業界も成功のケースが目立つ。
福岡で磨いたビジネスモデルをぶら下げて、意気揚々と東京征伐に進出した福岡の企業の成功例は、数多くあるが、とくに飲食業の場合は、一挙に規模の膨張を果たしている。競争が厳しく食道楽の多い博多で鍛えられた飲食業のノウハウの蓄積は半端ではない。東京は市場の懐が深い、売り手市場の世界である。ヒットすれば爆発する。同業者との競争厳しい闘いに勝ち残れるビジネススキルで武装できた福岡の企業であれば、東京での勝利は確定したようなものだ。福岡発のお好み焼き屋を友人が東京・赤坂にオープンして12年になる。昼夜繁盛しているのは食い手が無数にいるからだ。
<東京が収益の拠点になったアダル>
東京でシェアを握り、どん底の市況を潜り抜けた例として、(株)アダル(福岡市博多区、武野重実社長)がピックアップできる。業務用の家具メーカーであるが、同業他社の大半は倒産・廃業した。だが、長いデフレの時代が続き、存続メリットの恩恵を受けることができなかった。同業者壊滅のなかで、厳しい単価を余儀なくされてきた。また得意先の、設備投資の極減のなかで、全国の営業所は売上ダウンという過酷さが経営を圧迫してきたのだ。この苦しい局面を打破できたのは、東京支店の売上が好調であったからである。一時は全社売上の40%に迫る時期もあった。アダルの例でも、大票田の東京地区を無視するのは、経営者として失格との烙印を押されても反論の余地がない。
<坪120万円・1,500坪の工場用地を買う、冨士機>
汚泥処理・生コンプラントメーカーである(株)冨士機(福岡市博多区、藤田以和彦社長)は、東京に支店(新木場)を出して10年になる。東京での主力業務は、地下鉄工事の汚泥処理業務である。最近は地下40m以下まで深く掘り抜くので、同社の技術力が重宝される。加えること、最近では首都圏高速道路建設も地下貫通が増えた。同社の出番が増大したのである。東京オリンピック開催に向けて、地下鉄工事計画が目白押しだ。どの工事予算も1,000億円を超えている。同社の技術力の高さと将来性を見込んでいる東京メトロが出資して、共同工事会社を設立したことも付記する。
現在、東京メトロの新木場の操作場の敷地内を借りて、工場を運営してきた。今後、受注の急増が見込まれる。現在の処理能力では、まったく対応は不可能である。そこで自社工場を買い求めることにした。新木場周辺を物色して近々、1,500坪の土地(工場建物付き)を買収する。坪120万円だから、18億円の価格になる。冨士機の嘉麻市にある工場は、4,000坪強ある。だが、坪1万円だから4,000万円にしかならない。新木場の40坪の土地で4,000万円を超える。東京では120倍の高い土地で、製造工場が賄っている事実も知っておく必要があろう。
※記事へのご意見はこちら