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「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」堀江貴文氏著(ダイヤモンド社)
書評・レビュー
2013年11月12日 15:46

 誰もが最初は「ゼロ」からスタートする。
 失敗しても、また「ゼロ」に戻るだけだ。
 決してマイナスにはならない。
 だから、一歩踏み出すことを恐れず、前に進もう。

 (株)ライブドア元代表取締役社長、ホリエモンこと堀江貴文氏のことをメディアで一度も見かけたことがない、という人はいないだろう。
 東京大学出身、大学生時代に後のライブドアとなるITベンチャー企業(有)オン・ザ・エッヂをおこす。2000年4月に東証マザーズ上場を果たし、04年には当時の近鉄バファローズ買収に手を挙げた。05年にはニッポン放送の筆頭株主になり、衆議院選挙に出馬。その頃には、時代の寵児だと言われていた堀江氏だが、06年1月、東京地検特捜部から強制捜査を受け、証券取引法違反の容疑で逮捕。懲役2年6カ月の実刑判決を下された。11年6月に収監され、服役。そしてことし(13年)11月10日に刑期を終了した。
 刑務所での生活を終え、出所した堀江氏が、これまでのことをどう思い、今、何を思っているのか。そして、これから何を考えようとしているのか。出所とほぼ同時に刊行されたこの本には、それがリアルに記されている。

book.jpg 同書を読むと、今までメディアで見てきたものとは違う堀江氏の姿を見ることができる。福岡県八女市で育った幼少期、決して特別恵まれていたとは言えないごく普通の家庭に生まれ、落ちこぼれを経験したこと、自転車40分かけて登下校したこと、麻雀に明け暮れた日々を過ごしたこと、女の子とのコミュニケーションに苦労したこと、さびしくて号泣したこと。
 ライブドア時代に連日マスコミに追いかけられていた堀江氏からは想像し難いイメージだ。今まで、万人からは遠く離れた違う人だと思われがちだった堀江氏の、人間らしい姿が記されている。
 
 この本のなかで一番心に残ったのは、"心の中に「好き」の感情が芽生えてくる前には、必ず「没頭」という忘我がある。"という部分。 
 誰でも趣味に明け暮れた経験はあるのではないだろうか。筆者には、時間を忘れて読書をすること、楽器を吹き続けたり、飽きるまでもくもくと編み物をしたりという没頭した経験がある。時間も忘れ、ただひたすらに没頭した結果、何かを好きになった。
 堀江氏は、仕事に没頭した結果、あれだけの大きなことをやってのけた。
 自分なりにルールを決め、没頭して取り組めば、気持ちの上でも楽に努力をすることができる。誰でも、気持ちの持ちようと、努力の次第で大きく成長することができるのだと教えられた気がした。
 刑務所に入り、自分自身を改めて見つめなおし、またゼロからやり直す堀江氏は、今ここにあることに没頭して、これから何を愛するようになるのだろう。その地を目指す同氏の言葉は、「きっかけがつかめない」「私これからどうしたらいいだろうか」と悩む人の背中を押し、一緒に一歩を踏み出すきっかけを与えてくれるに違いない。



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2013年10月 8日 15:34
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