福岡県飯塚市に本社工場を構え、鋼製型枠の設計と製作を手がける(株)カシマ製作所。従業員はわずか6名と小規模ながら、創業以来蓄積されたたしかな技術と思いやりで、激変淘汰の時代を生き抜いている。同社代表取締役の鹿島克介氏に話を聞いた。
<人材の育成にも着手>
鹿島氏は業界の人材不足について、こう語る。
「職人を目指したいという若者を増やさないといけない。日給払いでは、不安定すぎて、結婚もマイホーム購入もままならない。職人は暑いなか、寒いなか、命をかけて仕事をしている。夢を持って、ビジョンを持って、当たり前の生活ができないと、若い人たちは集まらない。もっと言えば、今の職人不足もそれさえちゃんと確保できていれば、生じなかったはずだ」。
同社には30代が3人在籍し、今年18歳の高卒も入ってきた。業界でも珍しい若い技術者集団だ。「やりがいはやはり、自分が作った型枠で建物ができ上がる達成感」と鹿島氏。バタフライ構造型枠や浮体風力発電型枠など、意外に九州で初という製品も少なくない。そういった仕事ができたときは、積極的に社員に伝達するようにしている。
また、細やかな気遣いもある。作業着は本人たちに選ばせる。ファッションにもこだわりを持たせた方がいいと思い、始めた。工場では、1人ひとりが思い思いの作業着を着こなしている。
<ミャンマー人から高評価>
鹿島氏は、「今後、日本は人口減に加え、建物の建築数も減っていく。日本のマーケットに大きく期待をするのはやめて、海外に市場を求めていくべきだ」と考え、当初は中国進出を検討していた。しかし、視察に行っても進出に踏みきれない「何か」があった。
今年10月、ミャンマーへ現地視察に向かった。現地でのプレゼンでは胸を張って、自社の品質の高さを語ることができた。そして、ミャンマー人からは「すぐにでも使いたい」と高評価を受け、ミャンマー進出の自信が持てた。それだけではない。ミャンマー人の心の美しさにも魅了されたからだ。市場は中国よりも小さいが、ミャンマーでは基本的なインフラ整備が進んでおらず、そこには十分な需要が見込めると判断した。
当初はミャンマーの鉄工所に人材を送り、設計加工技術の提供や研修生受入での人材育成を検討していた。しかし、現地で話を聞くと、直接製品の輸出でも採算が取れそうなことに気付いた。まずは輸出で基盤を作り、そして長期的には人材交流などを検討している。外国人技能実習生の活用も視野に入れる。受け入れた実習生を3年間日本で鍛えて、帰国後に自社の事務所をミャンマーで開設し、即戦力の幹部やリーダーとして据える。これならば、技術を継承していくことも可能となる。
規模は小さくても、独自の技術を持った企業であれば、どこでも勝負できる。次の思いやり製品をぜひ見てみたい。
≪ (前) |
▼関連リンク
・(株)カシマ製作所
※記事へのご意見はこちら