中央保育園移転事業における、高島宗一郎福岡市長の背任の疑いについて捜査の必要があることを司法が認めた。福岡地検は11月8日、福岡市中央区の会社役員・堀田剛氏からの「刑法247条(背任罪)に該当するので、捜査の上、厳重に処罰していただきたい」との告発を受理。堀田氏は、(社福)福岡市保育協会 中央保育園の現・移転予定地に反対する保護者の会の代表である。
告発状は、吉田宏前市長時代から検討および計画が進められ、予算執行について議会の承認を受けていた中央保育園の現地建て替え事業が、現地の商業利用を考えた高島市長の指示で白紙化され、移転新築へ変更されたとしている。また、(1)現地建て替え事業では待機児童数11名の中央保育園の定員を50名増やす計画であり、移転新築の土地取得が待機児童解消のためではないこと、(2)現地建て替えであれば現在の市有地を利用するため、土地購入そのものが不要になると指摘している。
現・移転予定地の購入にかかった費用は8億9,900万円。このほか、現地建て替え事業の検討には、2012年度までに合計4,267万1,286円の費用がかかった。9億円超の血税をムダにしたことで市民に損害を与えたということになる。刑法が定める「背任」の定義にあてはめると、「市長(他人のために事務を処理する者)が、現地の商業利用(自己や第三者の利益)を図り、議会承認事業の白紙化(その任務に背く行為)をし、市民(本人)に財産上の損害を与えた」となる。罰則は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金だ。
現地建て替えを移転新築に変更したことについては、市議会でも追及がなされている。高島市長の指示があったことを証言する当時の関係者もいるが、現在のところ、高島市長は「報告は受けたが、こども未来局が判断してやった」としており、指示の事実を認めていない。裏を返せば、計画変更に関する市長関与に重大な問題があることを認めていることにほかならない。
一方、こども未来局の吉村展子局長は高島市長をかばい、「11年3月11日の東日本大震災を受けて、速やかに移転新築を進め、園児の安全確保が必要と判断した」と、苦しい答弁を繰り返す。しかしながら、中央保育園が入る福岡市立中央児童会館の耐震性の問題が指摘されたのは、05年3月20日に発生した西方沖地震の後。当然ながら、現地建て替えにも耐震性の問題は検討されていた。
市民の代表者である市議会を欺き、結果、市民に約9億円の損害を与え、窮すれば、自分の部下に責任を押し付ける。さらに、その先には、いまだ保護者および保育士の理解が得られていない新保育園の安全対策によって、市民の何よりの財産と言える子どもたちが犠牲になる可能性さえある。高島市長が目指す「アジアのリーダー都市」とは何なのか。未来を担う「国の宝」である子どもをないがしろにして経済を優先する政治・行政が、世界に誇れるものとは到底思えない。
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