2012年４月に町制施行90周年を迎えた高千穂町（宮崎県西臼杵郡）。「天孫降臨の地」と言われ、日本中で知られる名高い歴史のまちだが、深刻な過疎化問題を抱える地域自治体の１つでもある。その高千穂町の特産物が、今、福岡などで数々のイベントを主催し脚光を浴びている。職員を率先して自ら経営手腕を発揮する内倉信吾高千穂町長への取材をもとに、高千穂町の魅力を再考する。

＜合併に頼るのではなく町としての自立を目指す必要がある＞
　高千穂町の夜神楽などで町を訪れる観光客は、高千穂町の物産にも目を留めていることがうかがえる。資料によると、事業所売上直営売店の伸び率は48.3％と大幅に伸びている。魅力的な農畜産物が揃う高千穂町だけに、販売して収益を上げることが大切だ。販売となると生産者だけが頑張っても理想通りにはいかない。だからこそ町でアイディアを出し、動く必要があると内倉信吾高千穂町長は考える。
　「高千穂の物は質が良い」という印象も広がっている。物販物に高千穂の名を冠して宣伝すると、良質であることがすぐに理解してもらえるようになった。
　「高千穂」という土地の魅力があるからこそ、町も遣り甲斐がある。

　自治体の首長たるもの、「いかに税収入を上げるか」という問題に取り組むのが務め、という声もある。それを考える今の時代。経営者は常に年中無休で、会社のことを考えているものだが、高千穂町長も同じ心構えで常に町のことを考えているようだ。その成果があってか、財政状況も健全だ。「おかげさまでこの６年間に町の基金保有額も順調に増加しています。財政は安定しているほうだと思います」（内倉町長）。
　だが高千穂町は深刻な問題をも抱えている。少子高齢化による人口減少と過疎化の問題だ。

　75歳以上が全体の２割以上、100歳以上が17人で、いまや100歳を超えないと長寿とは言えない状態にある。過疎化を押さえるのは難しい。同様の悩みを全国の自治体が抱えている。町のまま自立していくためにはインフラ整備を行ない、生活環境の向上を目指さなければならない。
　高千穂町は、高齢者が元気な町だが、医療関係施設の充実は必須課題だ。高千穂町国民保険病院にはCTやMRIなど最先端の医療機器を有する総合病院で、地域医療への貢献が評価された質の高い病院だが、医師不足が深刻だ。現在医師29人体制で、そのうち10人が常勤だが、「もっと増やしたいです」と内倉町長。泌尿器科の医師がいないのも難点だ。もしものときは熊本や延岡を頼らざるを得ない。
　2013年７月には、町内に産婦人科医院が開院したことにともない、以前はいなかった産婦人科医が常勤したことは喜ばしい。少子化対策にもつながるものと期待されている。

＜若者が定住できる町づくりを目指す＞
　人口の増加策として、他市町村や他県からの移住者増加も求められている。福島県をはじめとする他県からの受け入れを進めていたが、土地柄や風習に合わないという理由で定住されないこともある。Ｕターンの流れもあるが状況は同様だ。この地での出生率が上がらないと、根本的な人口問題は解決しない。だからこそ定住者、とくに若者が増加することが望ましい。では、どのようにして町民としての若者を増やしていこうと考えているのか。

　内倉町長は、「若者が住みやすい町にする試みは、若い職員が中心になって行なってくれていますよ」と語る。内倉町長が動くときは一緒に動いてくれるし、今注目の特産物も中心となって動いているのは若い職員だ。新しい企画も立ててくれている。その様子を見ていると、今後、若者にとって魅力ある町となって定住者が増える可能性はある、と希望を感じるという。
　観光地としては「パワースポット」として若者の注目を集めている。訪れてみると、自然環境のなかで癒されることの素晴らしさを実感できる。年月は掛かると思うが、若者にとって魅力ある町づくりを地道に進める効果があると思われる。

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