講演やテレビ番組で、日本人の政治家やタレントが「台湾の人に感謝」「台湾の人は情熱的」「我愛台湾（台湾を愛してる）」を連呼する傾向が見られるようになった。特に大震災以降、日本人が多大な義援金を被災地に送った台湾の人達に「感謝」の言葉を述べることが多いが、最近、日台報道関係者の間では「なんでもかんでもそればかり言い過ぎ」との声が上がっているという。

　そもそも、日本人が口にする理屈に「台湾の人は〜」と、「台湾」を一つの括りでまとめてしまっているところに大きな落とし穴がある。「括る」ことで思考を停止させてしまっているのだ。在台の日本人の多くが知っていることだが、大震災で義援金が送られる反面、「地震で日本は壊滅的。日本とのビジネスは成り立たない」と、台湾企業に勤める多くの日本人が解雇された。現状を知る人にとっては「義援金に感謝」と言われれば言われるほど、違和感が生まれてしまうのだ。台湾人にもいろいろ、日本人にもいろいろ。例えば「博多の人は亭主関白」と言われれば、「全員がそうかな？」と疑問符が付いてくる。

　日本が中国とも韓国とも険悪ムードが出ている中で、間隙を縫うように、台湾は日本に対しても様々な仕掛けを行なっている。日本側も台湾が頼みの綱。イベントを開催すればスポンサーも集めやすいだろう。しかし、「台湾の人に感謝」と、もはや「常套句」になっている文言を繰り返せば繰り返すほど、日台それぞれを熟知する関係者は美辞麗句の文言に「うんざり」しているのだ。

　また、台湾人の前で、「中国大陸批判」をする日本人も意外と多い。以前は台湾独立派も主流だったので、それでよかったが、国民党政権になり、情勢が変わった。台湾と中国はかなり親密になっており、台湾人の中には、親、祖父母などルーツが大陸にある人も少なくないのだ。ポイントを稼ごうと、講演等で「中国はダメだけど、台湾は友達」旨の発言をする日本の政財界関係者がいる。

　以前は拍手や喝采を浴びることもあったが、最近は「シーン」と場がしらけてしまうようなので注意が必要だ。

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