臨時国会が召集されて約1カ月、12月6日の会期末までの折り返し地点を過ぎて、ここにきて妙な噂が耳に入る。安倍晋三首相は、会期を延長せずに、国会を閉じた後に大義を果たすというのである。
会期を延長したらできないことは何だろうか。会期末のわずか2日後は、12月8日。1941(昭和16)年のこの日、対米英戦争の宣戦の詔書が交付された(太平洋戦争開戦)。
安倍首相は、第1次安倍内閣で靖国神社に参拝できなかったことを「痛恨の極み」と語り、閣僚から年内参拝の可能性を示唆する発言が出ていた。国会会期中に参拝すれば、国会審議で野党から集中砲火を浴びることは必死だ。会期を延長したら、この日に参拝できなくなる。それを避けるために会期を延長しないというなら、つじつまは合う。
それでは、目白押しの重要法案のめどはどうするのか。いくら巨大与党であっても、強行採決を連発すれば、正常な運営とは言えなくなる。延長しないなら、各法案について、成立させるか、継続審議にするか、廃案かの仕分けにかからないといけない。
今国会最大のテーマは成長戦略の具体化にあり、2020年東京オリンピック開催決定を受けて、絶好調のアベノミクスはホップステップジャンプ確実のはずだった。
安倍首相にも譲れない政治的信条があるかもしれないが、日本の経済が本当に再生するには、まだ胸突き八丁にも差し掛かっていない。オリンピックバブルだけで持ち上げられる状況ではない。靖国が大事か、日本経済が大事か。靖国神社に参拝して、日本経済を元の木阿弥(もくあみ)にしてはならない。
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