中国を旅行し、トイレの汚さに「もう二度と中国には行きたくない!」と考えた日本人は少なくないはず。ここでは記述できないくらいにヒドイ惨状。有様を一度でも目にすると、その後、食事も喉を通らないくらいのトラウマになってしまう。
中国は経済も成長しているにも関わらず、現状が変わってこないのは何故なのだろうか。その大きな理由として「感覚的な違い」がある。中国人は、「食」と「排泄」の距離感、感覚が日本に比べて近い。排泄肥料で作った農産物を、その家で食べる。肥溜めにためた排泄物を畑に流し込み農作業をして収穫を行なう。地産地消が近距離で行なわれるからにほかならない。
特に中国の農村では、トイレと食卓の位置も近い。トイレの匂いの中で食事をすることが習慣化してきた。一方、日本では、食品の流通規模が拡大し、農作物や畜産品がどのような行程で製造されているのか、過程は切り離され、徐々にイメージがつかなくなってきている。
もともと中国人の考え方の中に、「排泄空間を隔離し清潔にするべきだ」という概念が少ないのだ。日本観光の中国人が、トイレのドアを閉めずに用を足し、日本人から嫌がられるが、そもそも「排泄を見られたくない」という概念も日本人に比べて希薄だ。仕事場で「トイレの匂いが漏れてくる場所で弁当を食べる」というのも当たり前だし、ウォシュレットが流行らないのは「いちいち洗う文化」がないためだ。日本人は「排泄」に関する行為、空間をより「遠ざけたい」という傾向にある。これらは、食と排泄の「距離感」の相違が根本。中国で、食と排泄は共に「自然の循環」の中にあるのだ。
中国では、路上で白菜やさつまいもを野ざらしで売っている光景がいまだによく目にするが、そばに犬のフンが転がっていたりする。それに対し、買う側が「こんなところで売って汚い!」と文句を言うことはない。商売は普通に成立している。
ただ中国人は、最近「農薬」に対しては敏感になってきた。自然の摂理の中にはない「人工」「化学」を介しているから。農薬を使って綺麗に仕上がったものより、虫食いがあっても「農薬を使っていない」野菜を重視するようになってきた。
中国で生活するならば、トイレに対しての価値観は順応しなければならないだろう。高級なレストランでも、トイレは汚いことが多い。中国人客もトイレに清潔さをあまり求めないし、求められないから提供もされない。現実に、それに耐えられず帰国する日本人も少なくないのだが・・・。
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