アジアの玄関口、福岡市のシティホテルとして、市内だけでなく、九州の魅力を伝えることに尽力しているという(株)ホテルオークラ福岡。代表取締役社長の水嶋修三氏は、「福岡市には、九州のゲートウェイだからこそ発揮できる魅力がある」と語る。その魅力とは何か。「観光都市、福岡」となるにあたって何を目指すべきか、話を聞いた。
<福岡は滞在型の観光都市>
"住んでよし、訪れてよしの国づくり"とは、2006年に成立した「観光立国推進基本法」の基本理念であるが、各地域もその理念に沿って、地域住民が誇りと愛着を持つことのできるような様々な取組をしているところだ。実は福岡の魅力は、まさにその住み心地の良さにあると言える。
「意外かもしれませんが、観光客が本当に求めているのは、観光のランドマークよりも、訪れた街の暮らしを丸ごと体験することなのです」と水嶋社長。そして、福岡市は九州のゲートウェイとしての機能があるのだから、市だけではなく福岡圏域として、近郊地域を巻き込んだ"滞在型"観光都市を目指すべきだとも言う。
「日本の観光は、各都市を転々とする慌しいものになりがちです。しかし福岡市は、ここを拠点として近隣都市へ観光客が足を向けられるような滞在型を持ち味とすべきでしょう」(水嶋社長)。
考えてみれば、福岡市民自身が、日頃は都市での生活を営み、週末にはショッピングやスポーツなどを楽しむほか、郊外の自然や歴史的建造物などを訪れたりして生活を楽しんでいる。訪れた先での暮らしぶりに触れることこそ観光の醍醐味だとするならば、福岡市に滞在し、近郊に出かけて観光を楽しむという"福岡市滞在型"の観光は、まさに、暮らしそのものを丸ごと体験してもらえる観光スタイルだと言えよう。
<市民をあげて心からのおもてなしを>
ホテルとは普通、地元の人々が泊まる類のものではない。そんな地元の人々をホテルに惹き付けるには何が必要なのか。水嶋社長は、ホテルをちょっとしたリゾート空間、あるいは人生の晴れ舞台を演出する空間として提案すれば、十分地元住民にもホテルライフを楽しんでもらえると答える。
ホテルオークラ福岡のレストランフロアには、「1店を除いて、他は弊社が運営するレストラン」(水嶋社長)が占めている。ここでは季節に合わせて、「アメリカフェア」や「北海道フェア」など、福岡に居ながらにしてほかの観光地を味わえるようなフェアを展開している。
また、博多座や福岡アジア美術館に隣接しているという好立地を利用し、月ごとの催し物にちなんだメニューも用意するほか、開業15周年にあたる今期は、ロビーコンサートなど文化活動にも力を入れる。人生の晴れの舞台をホテルで体験してもらえるような企画を準備し、いつでも地元の人々の暮らしに根付いた「最高のおもてなし」ができるように尽力している。
おもてなしは、ホテルオークラ福岡が非常に重視していることだ。だからであろう、観光地として活性化するには、一般市民もおもてなしの心を大切にすることが必要だと説く。例えば、屋台や商店街などを歩いてまわれば、必然的に触れ合いの場が出てくる。自然、歴史、文化、食など、全てが揃った福岡ならではの心の触れ合いというものがあると言える。
観光客の心に一番残るのは人との触れ合いというのなら、150万人が住む福岡市がおもてなしを意識することによって、大規模な観光都市として発展していく可能性は高い。「過ごしやすくて、街も美しい。そこに、おもてなしの心が加われば、すばらしい観光都市となるでしょう」と水嶋社長も期待している。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:水嶋 修三
所在地:福岡市博多区下川端町3-2
開 業:1999年3月
URL:http://www.fuk.hotelokura.co.jp/
※記事へのご意見はこちら