<自民内に変化?>
原子力市民委員会の座長を務める舩橋晴俊法政大学社会学部教授は、「フィンランドのオンカロ(高レベル放射性廃棄物最終処分場)の状況を視察して、『今、方向を転換しなければならない』と気づいたのでしょう。興味深いのは、小泉さんが、大局に立った見方をしていること。エネルギーをどう維持していくのかという問題は、副次的な問題だと考え、大きな方向性を示している。原発を推進し、輸出しようとしている安倍政権にとっては頭が痛い問題でしょうが...。自民党のなかで迷っていた政治家にとっては、正直に意志表示をしやすくなったのではないか」と、分析する。
これまで自民党内部では声を上げづらい空気が漂っていたが、脱原発を目指したいと思っている議員は少なからずいるだろう。カリスマ性のある元首相の発言だけに、その空気を換える可能性はありそうだ。
危機的状況に陥った時、突破するには大局的にモノを見る指導者が必要だ。リーダーが長期的なビジョンを掲げて決断し、リーダーシップを取り、そのビジョンに向かって部下や知恵者たちが実際的に問題を解決していくのである。今回の小泉元首相の発言は、安倍首相に、その決断を迫ったと言えるだろう。「政治が一番大事なのは方針を示すことだ。政治が『原発ゼロ』という方針を出せば、あとは知恵のある人がいい案を出してくれる」と小泉元首相はいう。
<ネット上でも論議>
インターネット上でも、論議を呼んでいる。ドワンゴの取締役を務める実業家で、慶応義塾大学大学院の夏野剛教授は、ツイッターで、「小泉さんの話はわかりやすく説得力がある。これは影響でかいな」と、つぶやいた。それに対し、「たしかに影響はでかい。しかし、エネルギー産業からの援護がないと前に進まない...。退路を断つのは危険すぎる...。しかし、そのくらいの意気込みでないと原子力村は解体できない...」などの意見が寄せられていた。
フェイスブックや掲示板などでは、「世論に与える影響は大きい。脱原発派の政党や議員と共闘できれば、山が動くのではないか」、「もう1回、自民党をぶっ壊せ」などの賛同する意見がある一方、「首相のポストを外れているし、議員の席は息子に譲っているので、議員に返り咲く気がないのなら、実効性はないのでは」、「現在は1人で動いているので、さほど影響力はないかも」、「真意はまだよくわからない。自民党の政治家で脱原発の意思のある人でも慎重に動くのでは...」といった疑問の声も上がっている。
≪ (前) |
※記事へのご意見はこちら