アジアの最前線であるシンガポールから日系企業の最新動向を情報発信し、また企業事例や政策事例を紹介するセミナーなどを開催している統括・ハブ機能研究所。同研究所の運営や人材育成、海外事業のプロデュースを手がける同研究所の木島洋嗣氏に拠点シンガポールの今を聞いた。
――中小企業では、どのような分野でチャンスがありますか。
木島洋嗣氏(以下、木島) シンガポール進出が現実的なのは、規模の大きな会社か、ものすごくコアな技術を持った中小企業かのどちらかでしょう。申し訳ありませんが、何の技術もない中小企業は難しいでしょう。競争環境が大きく変わります。日本とは違って、こちらは世界中の企業がライバルです。世界中のどこにも負けない技術があれば、競争で勝ち抜くことができます。景気は決して良いわけではありませんが、建設業など業種を絞って考えれば、まだまだチャンスはあります。飲食店も飽和状態で参入は難しい状況にありますが、それでも強いコンテンツを持っていれば、勝っていけるでしょう。
――先進的な分野で考えると、日本の介護サービスは高齢化の進むシンガポールで通用するかと思います。
木島 日本の先行モデルを生かして参入できるという考え方もありますが、まず2つのことを考えなければなりません。まず、市場がどの程度あるのか。そして、顧客のニーズをつかんでいるのかということ。日本の介護技術は先進的だという人は多いですが、それをこちらの高齢者が必要としているものなのかどうかです。
たとえば、こんな例があります。エアコンを作っている日本メーカーが、モーター音のしない製品を開発しました。世界でもその企業だけしかできない技術です。それをシンガポールに納品したら、クレームが発生しました。「音がしないので、冷えている感じがしない」という理由で日本製を手放し、中国製を購入したそうです。掃除機も同様で、「うるさくないとゴミを吸い取っている感じがしない」と感じる方もいるそうです。ですから、日本の高い技術がどのような部分で必要とされるのか。どんなにすごい技術でも、ニーズとマッチしなければ意味がありません。
――中小企業の経営者に向けて、メッセージをお願いします。
木島 シンガポールには、魅力がたくさんあります。さらにシンガポールを拠点に、周辺国へのアピールも可能になります。これからはとくに地方の方にシンガポールのことを知ってもらいたいと思っています。そのためには、まずは視察から始めてほしい。またシンガポールは世界で最もエキスポの開催が多い国です。イベントに合わせて、シンガポールに来てもらうのが最も理想的です。
4年前には、今のシンガポールの姿を想像できませんでした。とくに東南アジアは変化のスピードが早い。局面局面での、的確で迅速な判断が必要になります。そういう意味では、計画性がない方がビジネスで成功すると思います。
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